01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Roselli, R. J., & Diller, K. R. (2011). Biotransport: Principles and Applications. Springer.
章の要約
本書は15章からなり、約1,290ページ(米国議会図書館の記録では1,286ページ)に及ぶ。構成は際立って規則的である。教育の枠組みに1章、一般的な概念と問題の解き方に2章を割いた後、流体・熱・物質の輸送を3つの並行するブロックで扱い、各ブロックが同じ順序でアプローチを繰り返す。すなわち、マクロな取り扱い、一次元問題のための殻収支による取り扱い、一般的なミクロの取り扱いである。熱と物質のブロックは基礎の章で始まり、流体ブロックは生体流体のレオロジーで始まる。これは出版社が、生体流体輸送、生体熱輸送、生体物質輸送の各部が、基礎、マクロな輸送、一次元の定常・非定常輸送、一般的な多次元ミクロ輸送の章に細分されていると述べているとおりである。
第1章:Introduction to HPL Methodology(HPL方法論への序論)
冒頭の約30ページの章は、本書の教育上の枠組みを示す。出版社によれば、本書は「How People Learn」(HPL、人はどう学ぶか)の枠組みの中で教え学ぶための指針として設計され、VaNTH生体工学教育技術工学研究センター(米国国立科学財団の支援を受けた、ヴァンダービルト、ノースウェスタン、テキサス、ハーバード/MITのコンソーシアム)から生まれた。
第2〜3章:Fundamental Concepts in Biotransport(生体輸送の基本概念);Modeling and Solving Biotransport Problems(生体輸送問題のモデル化と解法)
この2章は合わせて約70ページで、個々の輸送を扱う前に、輸送に共通する概念と、輸送問題をどのようにモデル化し解くかを示している。
第4〜7章:生体流体の輸送
Rheology of Biological Fluids(生体流体のレオロジー、第4章)に続き、3つの章が段階的に詳細なレベルで流れを扱う。Macroscopic Approach for Biofluid Transport(生体流体輸送のマクロな取り扱い、第5章、このブロックで最長の約150ページ)、Shell Balance Approach for One-Dimensional Biofluid Transport(一次元の生体流体輸送の殻収支による取り扱い、第6章)、General Microscopic Approach for Biofluid Transport(生体流体輸送の一般的なミクロの取り扱い、第7章)である。
第8〜11章:生体熱の輸送
熱のブロックも同じ型に従う。Heat Transfer Fundamentals(伝熱の基礎、第8章)、Macroscopic Approach to Bioheat Transport(生体熱輸送のマクロな取り扱い、第9章)、Shell Balance Approach for One-Dimensional Bioheat Transport(一次元の生体熱輸送の殻収支による取り扱い、第10章)、General Microscopic Approach for Bioheat Transport(生体熱輸送の一般的なミクロの取り扱い、第11章)である。
第12〜15章:生体物質の輸送
物質移動のブロックが最大で、約430ページある。Mass Transfer Fundamentals(物質移動の基礎、第12章)、Macroscopic Approach to Biomass Transport(生体物質輸送のマクロな取り扱い、第13章)、Shell Balance Approach for One-Dimensional Biomass Transport(一次元の生体物質輸送の殻収支による取り扱い、第14章、約145ページ)、General Microscopic Approach for Biomass Transport(生体物質輸送の一般的なミクロの取り扱い、第15章)である。
主要概念
第1〜3章:枠組みと基礎
- HPL方法論:本書が基づく「How People Learn」の枠組み。
- 輸送問題のモデル化と解法:3種類の輸送に先立つ、問題設定と解法の共通の方法。
第4〜15章:3種類の輸送、3つのレベルのアプローチ
- 生体流体のレオロジー:生体流体の流動挙動。第4章。
- マクロな取り扱い:系全体についての収支。流体、熱、物質に共通。
- 殻収支による取り扱い:薄い殻についての収支で一次元問題を解く方法。
- 一般的なミクロの取り扱い:多次元の一般的な輸送方程式。
批判的分析
長所
- 同じ方法を3種類の輸送で繰り返す。 目次では、流体、熱、物質の輸送がそれぞれマクロ、殻収支、一般的なミクロの章に整理されているので、一度学んだ方法を3回使える。出版社は、本書を流体・熱・物質の流れを扱う首尾一貫した簡潔な解説だとしている。
- 自習と能動的学習のための設計。 出版社によれば、本書は詳細な数値解答付きの例題を数多く載せ、導出の途中経過を示しており、授業時間を技能の習得と自由度の高い問題に使えるようにすることを目指している。
- チャレンジ問題と演習。 出版社は、著者が自分の生体輸送の授業のために書いた学習チャレンジの豊富な例、章の要約、復習問題、章末の230題を超える問題があると説明している。
- 2種類の授業に使える。 出版社は、従来型の講義形式の授業にも、自由度の高いチャレンジ問題を軸にした能動的学習の授業にも使えると述べている。
短所
- 非常に大きい。 約1,290ページ、15章で、章の長さも大きく異なるため、1つの授業で全部を扱うことはできない。ブロック構造のおかげで取捨選択はしやすいが、3種類の輸送か3つのレベルのどれかを選ぶ必要がある。
- 枠組みの比重が大きい。 約30ページの1章が教育方法論に充てられ、本書はそれを軸に構成されている。輸送の内容だけが欲しい読者は、枠組みをどこまで使うかを決める必要がある。
- 入門を目指すが範囲は広い。 出版社は、本書が主に入門レベルの生体医工学・生物工学の学生向けだとするが、3種類の輸送について一般的なミクロの取り扱いを含むため、後半の章の規模は学生にとって負担になりうる。
- 装置や薬物動態学の章がない。 目次は輸送の種類とアプローチによって構成されており、薬物動態学、体外循環装置、組織工学システムを専門に扱う章はない。そうした応用を求める読者は、それらを軸にした教科書を探すべきである。
コースにおける位置づけ
Roselli と Diller は、生体系における流体・熱・物質の輸送を並行して扱い、HPLという明示的な教育の枠組みを軸に作られている。Fournier の Basic Transport Phenomena in Biomedical Engineering は、運動量と物質の輸送から薬物動態学、体外循環装置、組織工学、生体人工臓器へ進む別の選択肢で、装置志向の授業にはこちらを選ぶ。熱輸送が必要な場合や、収支とチャレンジ問題を軸にした授業なら Roselli と Diller を選ぶ。
Bird、Stewart、Lightfoot、Klingenberg の Introductory Transport Phenomena は、一般的な化学工学の最初の授業向けに運動量・熱・物質の移動を並行して展開する。Rubenstein、Yin、Frame の Biofluid Mechanics は循環系における流体力学と輸送を教える本で、流体の側面に関心のある読者にはより充実した選択肢である。Friedman の Principles and Models of Biological Transport と Truskey、Yuan、Katz の Transport Phenomena in Biological Systems は、より専門的な次の読み物で、前者は膜と細胞の輸送、後者は輸送理論と生理学をつなぐ定量的な橋渡しである。
本書の使い方
生体輸送や輸送論の授業を受ける生体医工学・化学工学・機械工学の学部生と、構造的な復習をしたい大学院1年生のための本である。当サイトが挙げる準備は、偏微分方程式までの微積分、入門的な生理学、熱力学または物理化学の最初の科目である。出版社自身は、読者を入門レベルの生物工学の学生と説明している。
1学期の授業では、まず第1章で枠組みを読み、第2〜3章を基礎とする。授業に合う輸送ブロック(流体を重視するなら流体、あるいは熱、物質)を選び、その基礎の章とマクロの章から読む。続いて殻収支の章、各ブロックを締めくくるのが一般的なミクロの章であり、どこまで進むかは授業の数学レベルによる。解答付きの例題を先に解いてから章末問題に取り組み、チャレンジ問題はグループ作業やプロジェクトに使うとよい。
