01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Webster, J. G., & Nimunkar, A. J. (Eds.). (2020). Medical Instrumentation: Application and Design (5th ed.). John Wiley & Sons.
章の要約
第5版は、14の章と短い付録からなる複数著者による参考書的な教科書で、全体でおよそ850ページある。出版社によれば、本書は病院で最もよく使われる医療機器の原理、応用、設計を述べ、設計を強く重視しているため、電子工学の素養が限られた科学者でも、市販されていないかもしれない機器を設計する方法を学べる。各章は専門家の執筆者が書いており、どの章も演習問題と参考文献で終わる。出版社は、コード付きのマイクロコントローラを用いた計測、回路シミュレーションを用いた機器設計、心電図用のドライ電極、睡眠時無呼吸モニタ、輸液ポンプシステム、医用画像技術、電気的安全性についての新しい内容を挙げている。
第1章:Basic Concepts of Medical Instrumentation(医用計測の基本概念)
Walter H. Olson と John G. Webster による約90ページの長い章で、共通の枠組みを示す。医学用語、一般化された計測システム(測定対象、センサ、信号調整、表示)、動作モード、測定上の制約、干渉入力と補償、生物統計学、静特性と動特性を扱い、続いて演算増幅器と能動フィルタ、最後に商業的な開発過程と医療機器の規制で終わる。出版社が公開している見本には、章内に15の例題があり、その後に演習問題と参考文献が続く。
第2〜3章:Basic Sensors and Principles(基本センサと原理);Microcontrollers in Medical Instrumentation(医用計測におけるマイクロコントローラ)
第2章(Robert A. Peura と Webster)は、変位、抵抗型、誘導型、容量型、圧電型のセンサ、ブリッジ回路、温度計測と光学計測を概観する。共編者 Amit J. Nimunkar による第3章は、マイクロコントローラ、ECGを例にした組込み医療システム、マイクロコントローラの選び方、IoTベースの医療機器を紹介する。
第4〜6章:The Origin of Biopotentials(生体電位の起源);Biopotential Electrodes(生体電位電極);Biopotential Amplifiers(生体電位増幅器)
この3章は生体電位のまとまりをなす。第4章(John W. Clark, Jr.)は興奮性細胞の電気的活動と、神経、筋、心臓、眼、脳から得られる信号を扱う。第5章(Michael R. Neuman)は、電極と電解質の界面、分極、体表電極、体内電極、微小電極を扱う。第6章(Neuman)は、心電計、干渉の低減、他の生体電位用増幅器、心臓モニタ、生体テレメトリを扱う。
第7〜9章:Blood Pressure and Sound(血圧と音);Measurement of Flow and Volume of Blood(血流量と血液量の測定);Measurements of the Respiratory System(呼吸器系の測定)
第7章(Peura)は、直接・間接の血圧測定、圧力測定システムの動特性、心音、カテーテル法を扱う。第8章(Webster)は、指示薬希釈法、電磁流量計、超音波流量計、プレチスモグラフィを扱う。第9章(Frank P. Primiano, Jr.)は、呼吸のモデル化と、圧力、ガス流量、肺容量、ガス濃度の測定を扱う。
第10〜11章:Chemical Biosensors(化学バイオセンサ);Clinical Laboratory Instrumentation(臨床検査機器)
第10章(Peura)は、血液ガスの生理学、電気化学センサ、光ファイバ化学センサ、ISFET、非侵襲血液ガスモニタリング、血糖センサ、電子鼻、ラボ・オン・ア・チップを扱う。第11章(Lawrence A. Wheeler)は、分光光度法、自動化学分析装置、クロマトロジー(目次の用語)、電気泳動、血液学を扱う。
第12〜13章:Medical Imaging Systems(医用画像システム);Therapeutic and Prosthetic Devices(治療・補綴機器)
第12章(Melvin P. Siedband)は、画像の情報量、変調伝達関数、雑音から始め、X線撮影、コンピュータ放射線撮影、CT、MRI、核医学、SPECT、PET、超音波検査へと進む。第13章(Neuman)は、ペースメーカ、除細動器、機械的な心血管系機器、血液透析、結石破砕、人工呼吸器、新生児保育器、薬物送達、外科器具、レーザーを扱う。
第14章:Electrical Safety(電気的安全性)
Olson による結びの章は、電気の生理学的影響、マクロショックとミクロショックの危険、規格と標準、保護設計、電気システムと電気機器の試験を扱う。
主要概念
第1〜3章:枠組み、センサ、制御器
- 一般化された計測システム:測定対象からセンサ、信号調整、表示に至る連鎖と、任意の補助要素。
- 静特性と動特性:感度、ドリフト、直線性、伝達関数の挙動で、機器が信号に追随できるかどうかを決める。
- 演算増幅器回路:本書全体で使われる増幅器、フィルタとその限界。
- 組込み医療システム:マイクロコントローラを用いた機器とその選択。
第4〜9章:生理学的測定
- 生体電位と電極:体内の電気信号の起源と、それを記録する界面。
- 圧力システムの動特性:カテーテルとセンサのシステムが圧力波形をどう形づくるか。
- 流量・容量の方法:指示薬希釈法、電磁式、超音波式、プレチスモグラフィの技術。
- 呼吸の測定:肺における圧力、流量、ガス濃度。
第10〜14章:化学、画像、治療、安全
- 化学バイオセンサ:血液ガスと血糖のための電気化学式・光学式センサ。
- 画像情報とモダリティ:X線撮影、CT、MRI、核医学、超音波に当てはまる画質の指標。
- 治療機器:ペースメーカ、除細動器など、患者に作用する機器。
- マクロショックとミクロショック:安全規格と保護設計を方向づける二つの電気的危険。
批判的分析
長所
- 設計が全体を貫く。 出版社は設計を強調しており、目次もそれを示す。第1章は開発過程と規制で終わり、マイクロコントローラの章が加わり、第14章は電源配電と機器設計の両面から保護を扱う。
- 専門家による寄稿。 生体電位、電極、流れ、呼吸、化学、画像の各章は、Clark、Neuman、Peura、Siedband をはじめ、それぞれの分野で働く執筆者が書いている。
- 練習問題が充実している。 見本の章には15の例題があり、各章は演習問題と参考文献で終わる。出版社は、全問題の完全な解答を収めた解答集と、補助のウェブページも提供している。
- 一冊で広い範囲。 センサ、信号処理、心血管・呼吸の測定、化学センシング、画像、治療、安全が一貫した順序で並び、主要な医療機器の系統を概観する授業に適する。
短所
- 重い出だし。 第1章は約90ページあり、そのうち40ページ近く(40〜77ページ)を増幅器とフィルタに費やしている。出版社は電子工学の素養が限られた読者に向けた本として示しているが、回路の基礎がない学生は苦労するかもしれない。
- 長さと取り扱いのばらつき。 約850ページで1学期の量を超え、執筆者も多いため、章ごとに比重が大きく異なる。たとえば医用画像は、X線撮影、CT、MRI、核医学、超音波検査などを約73ページで扱う。
- 新しい話題は簡潔。 IoTベースの医療機器の節は約3ページ(188〜191ページ)にすぎず、接続機器について深く知りたい読者には別の資料が必要である。
- 独立した書評が見つからない。 第5版について公表された書評は見つけにくく、ここでの評価は出版社の紹介と目次に基づく。
コースにおける位置づけ
このコース一覧のなかで、Webster と Nimunkar は包括的な工学のテキストである。Barbara Christe の Introduction to Biomedical Instrumentation は、機器を保守・管理する人の視点から書かれた、病院向けのやさしい入門書で、最初の一冊になる。Andrew Webb の Principles of Biomedical Instrumentation は、センサから安全性試験まで、機器の設計を段階的にたどるもので、本書の最初の3章に対するより直線的な代替になる。
Robert Northrop の Analysis and Application of Analog Electronic Circuits to Biomedical Instrumentation は、雑音を重視しつつアナログ電子回路を深く掘り下げており、第1章と第6章の自然な続きである。Togawa、Tamura、Öberg の Biomedical Sensors and Instruments は、測定される量ごとに構成された参考書で、最初の授業のあとに読む。Richard Cobbold の Transducers for Biomedical Measurements(1974年)は、センサに焦点を当てた古いテキストである。
本書の使い方
本書は、生体医工学の上級学部生、大学院生、医療機器の分野に移る技術者に向く。回路解析と演算増幅器を含む基礎的な電子工学を前提としており、生理学の入門と信号の知識があると応用の章が読みやすくなる。
実践的な読み方は次のとおりである。
- 中核: 第1章(選択した節)、第2、4、5、6、7、14章。共通の枠組み、センサ、生体電位の連鎖、圧力測定、安全性をカバーする。
- 重点に応じて: 組込み設計は第3章、心血管と呼吸の測定は第8、9章、化学センシングと検査機器は第10、11章、画像は第12章、治療機器は第13章。
- 流し読みまたは後回し: すでに知っているなら第1章の演算増幅器の節、授業が検査機器を扱わないなら第11章。
例題と各章末の演習問題を解き、利用できる場合は解答集や補助サイトを使う。安全性が最初から設計の一部になるよう、実習と並行して第14章を読み、設計プロジェクトを計画するときは、第1章の開発過程と規制の節をチェックリストとして使う。
