01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Northrop, R. B. (2012). Analysis and Application of Analog Electronic Circuits to Biomedical Instrumentation (2nd ed.). CRC Press.
章の要約
本書は15章からなり、付録、用語集、参考文献・推薦図書が付く。出版社によれば、各章には序文と章末の要約がある。第2版では3つの章(電力増幅器、無線患者モニタリング、RFID・GPS・超音波タグ)、用語集、新しい章末問題と例が加わった。以下の章題は出版社の目次に従い、番号は目次に並ぶ順序による。
第1章:生体医用信号の発生源と性質
最初の章は、内因性の生体電気信号の発生源(神経と筋の活動電位、心電図、その他の生体電位)、生体電極の電気的性質、外因性の生体電気信号を述べる。後続の回路が調整しなければならない信号を示す章である。
第2章:アナログ電子システムに用いる半導体デバイスの性質とモデル
pn接合ダイオード、バイポーラトランジスタと電界効果トランジスタの中域モデル、トランジスタの高域モデルと簡単なトランジスタ増幅器、光子・フォトダイオード・光導電素子・LED・レーザーダイオードを扱う。
第3–5章:差動増幅器/電子的な単一ループ帰還系の一般的性質/帰還、周波数応答、増幅器の安定性
第3章は、差動増幅器の回路構成、同相除去比、高周波での利得、入力抵抗、信号源インピーダンスが低周波CMRRに与える影響、医療用の差動増幅器をオペアンプで作る方法を扱う。第4章は電子的な帰還系を分類し、負の電圧帰還、負の電流帰還、正の電圧帰還の効果を述べる。第5章は増幅器の周波数応答を見直し、帰還系の安定性の意味を示して、根軌跡を帰還増幅器の設計と「線形」発振器の設計に用いる。
第6–7章:演算増幅器とコンパレータ/アナログ能動フィルタ入門
第6章は、理想的なオペアンプと実際のオペアンプ、電圧帰還型と電流帰還型の利得帯域幅の関係、アナログ電圧コンパレータ、生体医学における応用例を扱う。第7章は能動フィルタの応用と種類、電子的に同調できるフィルタを紹介する。
第8–9章:計装増幅器と医療用絶縁増幅器/生体医学応用のための雑音と低雑音信号調整系の設計
第8章は、計装増幅器、医療用絶縁増幅器、医療用電子増幅器の安全規格、医療用電源を扱う。第9章は雑音の長い論述で、ランダム雑音の記述量、線形時不変フィルタを通る雑音の伝搬、雑音係数と雑音指数、縦続接続された雑音のある増幅器、差動増幅器の雑音、帰還が雑音に与える影響、雑音で分解能が制限される例、いくつかの低雑音増幅器、そして「低雑音信号調整系の設計の技」を扱う。
第10–12章:デジタルインターフェース/生体医学信号の変調と復調/電力増幅器と生体医学への応用
第10章は、エイリアシングと標本化定理、D/A変換器、サンプルホールド回路、A/D変換器、量子化雑音を扱う。第11章は、振幅変調、位相変調、周波数変調とその復調、デジタル搬送波の変調を扱う。第12章は、電力出力素子、電力増幅器の級と効率、D級増幅器、非線形性とひずみ、ICの電圧レギュレータ、放熱を扱う。
第13–14章:無線患者モニタリング/生態学研究で使われるRFIDタグ、GPSタグ、超音波タグ
第13章は、無線患者モニタリングにおけるセンサーと信号、変調、RF通信プロトコル、UHF送信機とアンテナ、システム全体、無線モニタリングが患者のマイクロショックの確率をどう下げるか、そしてプライバシーを扱う。第14章は、RFIDタグの応用、タグの設計とリーダー、GPSタグ、漁業生物学での超音波タグを扱う。
第15章:生体医用計測に使われる特殊なアナログ回路とシステムの例
最終章は、位相敏感整流器、位相検出器、電圧制御・電流制御発振器、位相同期ループ、真の実効値変換器、IC温度センサーを扱い、3つの医療計測システムの例で終わる。
主要概念
第1–5章:信号、デバイス、帰還
- 生体電気信号と生体電極:心電図などの信号の性質と、それを拾う電極の性質が、回路の満たすべき要件を決める。
- 同相除去比:両方の入力に現れる干渉を差動増幅器が除去する能力。
- 負帰還と安定性:帰還が利得、入出力抵抗、周波数応答をどう変えるか、またいつ不安定になるか。設計の道具としての根軌跡。
第6–9章:増幅器、フィルタ、絶縁、雑音
- 演算増幅器:基本的な構成要素としての理想的・実際のオペアンプと、その利得帯域幅の限界。
- 能動フィルタ:フィルタの種類と、生体医学信号への応用。
- 絶縁と安全:絶縁増幅器、安全規格、医療用電源。
- 雑音係数と雑音指数:増幅器がどれだけ雑音を加えるか、縦続接続された段で雑音がどう蓄積するかの尺度。
第10–15章:インターフェース、伝送、特殊回路
- 標本化、エイリアシング、量子化雑音:信号をデジタル形式に変換するときの限界。
- 変調:正弦波またはデジタルの搬送波に生体医学信号を乗せること。
- D級増幅:スイッチング方式の電力増幅器とその効率。
- 無線患者モニタリング:プロトコル、アンテナ、マイクロショック、プライバシー。
- 位相同期ループと位相敏感検出:信号を取り出すための特殊な回路。
批判的分析
長所
- 一続きの信号経路。 本書は、信号源(第1章)とデバイス(第2章)から、増幅器、帰還、フィルタ、絶縁、雑音、変換、伝送へと進み、各回路ブロックを記録システムの一部として説明する。
- 雑音を詳しく扱う。 第9章は雑音に9つの節を割き、ランダム雑音の記述量から低雑音設計までを扱う。出版社も、雑音とその線形系での伝搬を記述する数学的な道具を強調している。
- 医療の安全が組み込まれている。 絶縁増幅器、安全規格、医療用電源、無線モニタリングのマイクロショックのリスクが、それぞれ独立した主題として現れる。
- 学習の支援。 第2版には、電子工学、生理学、生化学の用語の用語集、新しい章末問題と例があり、各章に序文と要約が付く。
短所
- アナログ中心。 デジタル変換は1つの章で扱われるのみである。ディジタル信号処理と計測器のソフトウェアは目次に現れない。
- センサーが少ない。 生体電極、光デバイス、IC温度センサーを除くと、目次には圧力、流量、化学測定のトランスデューサを扱う章がない。それらには一般的な計測の教科書が必要である。
- 一部の章は読者を限る。 第14章は漁業生物学などの生態学研究用のタグを扱い、臨床計測に焦点を置く読者にはあまり役立たないかもしれない。
- 前提が重い。 根軌跡、雑音解析、オペアンプの設計といった主題は、学部レベルの回路解析と電子工学、ラプラス変換、信号とシステムの基礎を前提とする。
- プロトコルが古い。 2012年刊のため、無線の章のWi-FiとBluetoothの扱いは当時のものである。
コースにおける位置づけ
Northropの本は、生体医用計測器の増幅と信号調整の段を専門的に扱う。Christe『Introduction to Biomedical Instrumentation』は病院の機器を平易に紹介する本で、Webb『Principles of Biomedical Instrumentation』は計測器の設計を、センサーから安全試験まで段階的にたどる。Webster、Nimunkar『Medical Instrumentation: Application and Design』は、センサー、増幅器、信号調整から臨床計測までを扱う標準的な工学の教科書であり、Togawa、Tamura、Öberg『Biomedical Sensors and Instruments』は測定する量ごとに構成されている。
まず、より広い範囲の教科書を1冊読むとよい。そのうえでNorthropは、それらの本が1、2章で要約する電子工学、雑音、帰還の深さを補ってくれる。設計上の問題が増幅器の選択、雑音の収支、絶縁にかかわるときに立ち戻る本である。
本書の使い方
記録用の電子回路を設計・解析する生体医工学の大学院生と実務の技術者に向く。学部レベルの回路解析と電子工学、ラプラス変換、信号とシステムの基礎が、実際上の前提となる。
実用的な進め方:
- 中核: 第1、3、4–6、8、9章。信号、差動増幅器と帰還増幅器、オペアンプ、絶縁、雑音を扱う。
- フィルタと変換: 用途に応じて第7章と第10章。
- 関心に応じて: デバイスの復習に第2章、変調、電力増幅器、無線モニタリング、特殊回路に第11–15章。
- 問題と用語集を使う。 章末問題に取り組み、なじみのない用語は用語集で調べる。
