01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Griffiths, D. (2008). Introduction to Elementary Particles (2nd, rev. ed.). Wiley-VCH.
章の要約
本書は序論、12の章、4つの付録(デルタ関数、崩壊率と断面積、パウリ行列とディラック行列、ツリーレベルのファインマン規則)からなり、約470ページである。出版社は、歴史を扱う第1章のあとに標準模型の定量的な説明が続く構成で、例題と多数の章末問題があると説明している。
第1章:素粒子の歴史的序論
11の節が、古典の時代(1897–1932年)から、光子、中間子、反粒子、ニュートリノ、奇妙な粒子を経て、八道説、クォーク模型、1974年の「十一月革命」、中間ベクトルボソン、標準模型へと進む。見本として公開されている章は自らを「民間伝承的な歴史(folk history)」と呼び、以降の部分の背景として素早く読むよう勧めている。
第2章:素粒子の力学
4つの力、量子電磁力学、量子色力学、弱い相互作用(中性と荷電)を定性的に概観し、そのあとに崩壊と保存則、統一理論の節が続く。計算を扱う後の章が精密にしていくための語彙を与える。
第3章:相対論的運動学
ローレンツ変換、4元ベクトル、エネルギーと運動量、古典的衝突と相対論的衝突を扱い、例と応用で終わる。
第4章:対称性
対称性、群と保存則、角運動量(角運動量の合成とスピンを含む)、フレーバー対称性、そして離散対称性であるパリティ、電荷共役、CP(中性K中間子とCP対称性の破れ)、時間反転とTCP定理を扱う。
第5章:束縛状態
シュレーディンガー方程式から出発し、水素(微細構造、ラムシフト、超微細分裂)、ポジトロニウム、クォーコニウム(チャーモニウム、ボトモニウム)、軽いクォークからなる中間子、そしてバリオンを扱う。バリオンについては波動関数、磁気モーメント、質量が含まれる。
第6章:ファインマン計算
崩壊率と断面積、崩壊と散乱に対する黄金律、そして計算技法を練習できる「おもちゃの理論」のファインマン規則を、高次のダイアグラムまで扱う。
第7章:量子電磁力学
ディラック方程式とその解、双線形共変量、光子、QEDのファインマン規則、例、カシミアのトリック、断面積と寿命、くりこみを扱う。
第8章:クォークの電気力学と色力学
e⁺e⁻衝突でのハドロン生成、電子–陽子の弾性散乱、色力学のファインマン規則、色因子、QCDでの対消滅、漸近的自由性を扱う。
第9章:弱い相互作用
荷電レプトンの弱い相互作用、ミュー粒子・中性子・パイ中間子の崩壊、クォークの荷電弱相互作用、中性の弱い相互作用、そして電弱統一(カイラルなフェルミオン状態、弱アイソスピンとハイパーチャージ、電弱混合)を扱う。
第10章:ゲージ理論
古典力学のラグランジュ形式から相対論的場の理論へ進み、局所ゲージ不変性、ヤン=ミルズ理論、色力学、質量項、自発的対称性の破れ、ヒッグス機構を扱う。
第11–12章:ニュートリノ振動/後書き:次は何か
出版社は、ニュートリノ振動と標準模型を超える物理の展望を扱う章が第2版で新しく加わったとしている。第11章は太陽ニュートリノ問題、振動、その確認、ニュートリノの質量、混合行列を扱う。第12章は、ヒッグス粒子、大統一、物質と反物質の非対称性、超対称性、ひもと余剰次元、暗黒物質と暗黒エネルギーを展望する。
主要概念
第1–2章:歴史的序論/素粒子の力学
- クォーク模型と八道説:第1章が目指すハドロンの分類。
- 4つの力:第2章で概観される電磁相互作用、強い相互作用、弱い相互作用、重力。
- 崩壊における保存則:どの崩壊が起こるかを制限する規則。
第3–5章:運動学、対称性、束縛状態
- 4元ベクトル:相対論的なエネルギーと運動量を1つの量の成分として扱うもの。
- 離散対称性:パリティ、電荷共役、CP、時間反転と、中性K中間子におけるCP対称性の破れ。
- クォーコニウムとバリオンの波動関数:クォークの束縛状態と、それがクォーク模型について示すこと。
第6–8章:ファインマン計算、QED、クォークの相互作用
- 黄金律:振幅を崩壊率と断面積に変える公式。
- ファインマン規則:ダイアグラムによる計算法で、最初におもちゃの理論に、次いでQEDとQCDに導入される。
- くりこみと漸近的自由性:QEDとQCDで結合が尺度にどう依存するか。
第9–12章:弱い相互作用、ゲージ理論、ニュートリノ
- 電弱統一:弱アイソスピン、ハイパーチャージ、混合。
- ヒッグス機構:自発的対称性の破れによる質量の生成。
- ニュートリノ振動と混合行列:ニュートリノに質量があることの証拠。
批判的分析
長所
- 歴史と計算の明確な役割分担。 見本の章は、これが素早く読むべき背景であることを率直に述べており、残りの章は定量的な作業へと進む。歴史的な導入が技術的な内容を遅らせることなく読める。
- ファインマン規則へのやさしい入口。 出版社は、おもちゃのモデルに基づく簡略化されたファインマン規則の導入を挙げており、スピンの複雑さなしに計算技法を学べる。第6章がこれを、第7章のQEDの前に提供する。
- 標準模型の流れを網羅。 目次はQEDから強い相互作用、弱い相互作用、ゲージ理論、ヒッグス機構へと進み、ニュートリノ振動が加わる。付録には、参照用にデルタ関数、ディラック行列、ファインマン規則がまとめられている。
- 例題と多数の問題。 出版社はこの両方を強調しており、教員は完全な解答集を入手できる。
短所
- 一部が古くなっている。 本文はヒッグス粒子の観測より前のもので、第12.1節はそれを今後の課題として扱っており、見本の章も、LHCが稼働するまではフェルミ研だけがトップクォークを生成できたと述べている。現在の読者がこれらの結果を知るには、より新しい資料が必要になる。
- 解答は教員向け。 解答集は登録された教員が入手できるもので、独習する学生には照合できる解答がない。
- 範囲が限られる。 目次には原子核の構造を扱う章がないため、本書は原子核物理と素粒子物理を合わせた教科書としては使えない。
- 出版社は前提知識を示していない。 出版社のページには前提知識が記されていない。目次には相対論的運動学(第3章)と角運動量(第4章)の復習があるが、ディラック方程式と第6–10章には量子力学に慣れていることが求められる。
コースにおける位置づけ
Griffiths は、このコースの書目の中で素粒子物理の計算を扱う学部向けの教科書である。Frank Close の Particle Physics: A Very Short Introduction は数式を使わない概説で、Dodd と Gripaios の The Ideas of Particle Physics は、理系の背景をもつ読者向けの簡潔な標準模型入門であり、数学は使うが重い形式は使わない。どちらも第1–2章の予習になる。Martin と Shaw の Nuclear and Particle Physics: An Introduction は学部レベルで両方の分野を併せて扱い、Krane の Introductory Nuclear Physics は、Griffiths が扱わない原子核の構造、崩壊、反応を学ぶための本である。
本書の使い方
本書は、量子力学の授業を終え、特殊相対性理論を学んだことのある学生に向いている。第3章と第4章は運動学と角運動量を復習するが、それらの科目の代わりにはならない。付録AとCには、後の章で使うデルタ関数とパウリ行列、ディラック行列がまとめられている。
1学期の授業の読み方としては、著者が勧めるとおり第1章は素早く流し読みし、第2章は全体像をつかむために読み、第3–5章は選択的に使って第4章と第5章の対称性とクォーク模型の部分を優先し、第6–10章を、各章が前の章のファインマン規則を使うので順番に核として読む。第11章と第12章は現在の状況を知るために読むか、任意にしてよい。第6–9章の技法は計算することで身につくため、本文と並行して問題を解くとよい。
