01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Urone, P. P., & Hinrichs, R. (2022). College Physics 2e. OpenStax. Free official edition: https://openstax.org/details/books/college-physics-2e
章の要約
本書は全34章、約1,650ページで、データを収めた三つの付録と解答集が付く。前半は力学、後半は電磁気学が柱となる。序文によれば、波動・光学・現代物理学は独立した単元として構成され、教員が配置を変えられるようになっている。各節の冒頭には学習目標が示され、各章の末尾には用語集、節ごとの要約、概念を問う質問、問題と演習が置かれている。
第1章:序論:科学と物理学の本質
物理学が何を扱い、法則や理論がどのように形づくられるかを述べたうえで、作業のための道具を整える。SI単位、単位換算、正確さと精度、有効数字、桁の見積もりである。
第2–3章:運動学;二次元の運動学
直線運動(変位、速度、加速度、等加速度運動の式、自由落下、運動のグラフ)を扱い、続いてベクトルの作図による合成と成分による合成、放物運動、相対速度へ進む。瞬間的な量は微積分を使わずに導入される。
第4–5章:力学:力とニュートンの運動法則;ニュートンの法則のさらなる応用:摩擦、抗力、弾性
ニュートンの三法則、自由物体図、垂直抗力と張力、問題解決の方略を扱う節、四つの基本的な力についての発展的な話題を取り上げ、続いて摩擦、抗力、応力とひずみを扱う。
第6–8章:等速円運動と重力;仕事、エネルギー、エネルギー資源;線運動量と衝突
向心力、コリオリの力、万有引力とケプラーの法則。仕事、仕事とエネルギーの定理、保存力と非保存力、エネルギー保存、仕事率、人体におけるエネルギー、世界のエネルギー消費。運動量、力積、一次元と二次元の衝突、ロケットの推進。
第9–10章:静力学とトルク;回転運動と角運動量
つり合いの二つの条件を、安定性、単純機械、筋肉と関節に適用する。回転の運動学と力学は直線運動との類比によって組み立てられ、慣性モーメント、角運動量、ジャイロ効果へと進む。
第11–12章:静止流体;流体力学とその生物学・医学への応用
密度、圧力、パスカルの原理とアルキメデスの原理、表面張力、体内の圧力。流量、ベルヌーイの式、粘性とポアズイユの法則、乱流、拡散と浸透を扱い、血流が繰り返し例として登場する。
第13–15章:温度、気体分子運動論、気体の法則;熱と熱の伝わり方;熱力学
温度、熱膨張、理想気体の法則、気体分子運動論、相変化、湿度。熱容量、潜熱、伝導・対流・放射。熱力学第一法則、熱機関、カルノー機関、ヒートポンプ、エントロピーを扱い、第二法則の統計的解釈で締めくくる。
第16–17章:振動と波動;聴覚の物理学
フックの法則、単振動、振り子、減衰、共振、波と重ね合わせ。続いて音速と音の強さ、ドップラー効果、気柱の定常波、聴覚、医療用の超音波を扱う。
第18–21章:電荷と電場;電位と電場;電流、抵抗、オームの法則;回路と直流計器
電荷、クーロンの法則、電場と電気力線、生物における電気力。電位差、等電位線、コンデンサー。電流、オームの法則、電力、交流、電気の危険、神経伝導。抵抗の回路網、起電力、キルヒホッフの法則、計器、RC回路。
第22–24章:磁気;電磁誘導、交流回路、電気技術;電磁波
電荷と電流に働く磁気力、ホール効果、モーター、電流がつくる磁場。ファラデーの法則とレンツの法則、発電機、変圧器、電気の安全、インダクタンス、RLC回路。言葉で述べられたマクスウェル方程式、電磁波の発生、電磁スペクトル、波のエネルギー。
第25–27章:幾何光学;視覚と光学機器;波動光学
反射、屈折、全反射、分散、像の形成。眼、視力矯正、色覚、顕微鏡、望遠鏡、収差。干渉、回折、分解能、薄膜、偏光。
第28–30章:特殊相対性理論;量子物理学;原子物理学
アインシュタインの公準、時間の遅れ、長さの収縮、相対論的な運動量とエネルギー。黒体放射、光電効果、光子、物質波、不確定性原理。原子の発見、ボーアの模型、X線、レーザー、量子数と排他原理。
第31–32章:放射能と原子核物理学;原子核物理学の医学への応用
放射能、検出器、原子核の崩壊、半減期、結合エネルギー、トンネル効果。医療画像、放射線の生物学的影響、放射線治療、食品照射、核融合、核分裂、核兵器。
第33–34章:素粒子物理学;物理学のフロンティア
交換粒子、四つの力、加速器、クォーク、大統一理論。続いて宇宙論、一般相対性理論、超弦理論、暗黒物質、カオス、高温超伝導体、未解決の問いを概観する。
主要概念
第1–10章:力学
- ベクトルの成分:運動や力を互いに独立な直交成分に分けること。放物運動を扱う方法の基礎である。
- 自由物体図:系に働くすべての外力を描いた図。ニュートンの第二法則を使う出発点となる。
- エネルギーと運動量の保存:力を一歩ずつ追わなくても結果を得られる原理。
- トルクとつり合い:つり合いの第二の条件。構造物や人体に適用される。
第11–17章:流体、熱、振動、音
- ベルヌーイの式:流れる流体のエネルギー保存で、圧力・速さ・高さを結びつける。
- 気体分子運動論:圧力と温度を分子の運動によって説明する。
- 熱力学第二法則:熱機関の効率の限界を、エントロピーを通じて表す。
- 共振:系を固有振動数で駆動したときに生じる大きな応答。
第18–27章:電気、磁気、光
- 電位:単位電荷あたりの位置エネルギーで、電圧として測られる。
- キルヒホッフの法則:回路の接続点と閉路に電荷保存とエネルギー保存を適用したもの。
- 電磁誘導:磁束が変化すると起電力が誘導される。
- 干渉と回折:光の波としての性質を示す現象。
第28–34章:現代物理学
- 時間の遅れ:運動している時計は、それが動いて見える観測者にとって遅れて進む。
- 光子:振動数に比例するエネルギーをもつ光の量子。
- 半減期:放射性試料の半分が崩壊するまでの時間。
批判的分析
長所
- 構成の決まった例題。 本書には番号付きの例題が289題ある。序文の説明どおり、各例題はまず問題を言葉で示し、関わる概念を述べる「方略」の部分を置き、そのあと解答と結果の考察が続く。
- 多様な演習。 概念を問う質問と通常の問題に加えて、複数の分野を組み合わせる統合概念問題、前提が不合理な答えを生み、その原因を突き止めさせる「不合理な結果」の問題、正解が一つに決まらない自作問題、そして本版で新たに加わった多段階の批判的思考の問題がある。解答集は奇数番号の問題を収める。
- 本文の中の生物学・医学への応用。 筋肉と関節、体内の圧力、血流、神経伝導と心電図、聴覚と超音波、視力矯正、原子核物理学の医学応用に充てた一章は、いずれも独立した節として扱われている。序文によれば、この課程の学生の多くが医学を目指すため、本版で拡充された。
- 補助的な工夫。 誤解を正す「誤解に注意」、自宅でできる実験、PhETシミュレーションへのリンク、そして現代物理学を学ぶ前に日常の現象を原子レベルの過程から説明する「大きなものと小さなもの」のコラムがある。
短所
- 意図して微積分を使わない。 微積分を要する結果は導出されず、結論だけが示される。本文自身が、コンデンサーの充電曲線やビオ・サバールの法則についてそう断っている。マクスウェル方程式は言葉でしか示されず、ガウスの法則には独立した節がないため、後に微積分を使う課程に進むと電磁気学の多くを組み立て直すことになる。
- 非常に長い。 約1,650ページは、二学期の課程で扱える量を超える。
- 終盤の章が薄い。 第33–34章では、統一理論、超弦理論、宇宙論にそれぞれ数節しか充てられていない。使える道具ではなく概観である。
- 数学の復習がない。 代数と多少の三角法が前提とされ、付録には復習ではなくデータが収められている。
コースにおける位置づけ
この入門物理学のリストの中で、College Physics 2e は代数に基づく本格的な通年用教科書である。数学を最小限にとどめたヒューイットの Conceptual Physics と、微積分に基づく概説書であるヤングの University Physics、ハリデイの Fundamentals of Physics、ティプラーとモスカの Physics for Scientists and Engineers、サーウェイとジュエットの Principles of Physics との中間に位置する。生命科学系や医療系を目指す学生向けの多くの課程のように、代数に基づく授業であれば本書を選ぶとよい。後に微積分に基づく課程を履修する人は、本書が省いた導出をそれらの本で補える。
クレップナーとコレンコウの An Introduction to Mechanics(微積分を用いた手ごわい力学教科書)、The Feynman Lectures on Physics(概念を軸にした二度目の学び直し)、ナーディグ、ホニェク、ライリーの 200 Puzzling Physics Problems(洞察力が報われる難問集)は、本書のような教科書で一通り学んだ後にとっておくのがよい。
本書の使い方
本書は、代数に基づく二学期の課程と、高校程度の代数と多少の三角法を身につけた独学者に向いている。よくある分け方は、前期に第1–17章、後期に第18–30章である。
- 中核: 第2–4章、第6–8章、第15章、第16章、第18–23章。
- 専攻に応じて: 生命科学系の学生には9.6節と11.9節、第12章、第17章、第20章、第26章、第32章が特に役立つ。第5章と第21章は工学志向の読者に向く。発展的な話題(4.8節、27.9節)は流し読みでよい。
- 現代物理学: 第28–31章で短い単元になる。第33–34章は概観として読む。
各節では学習目標を読み、解答を隠して例題を解き、章末の要約と照らし合わせる。概念を問う質問と数値問題を組み合わせ、各章で一題は「不合理な結果」の問題に取り組むとよい。答えがなぜありえないかを見抜く力は試験で報われる。奇数番号の問題は解答集で確認でき、序文によれば Student Solution Guide に一部の解答の詳細がある。場や波の学習には PhET シミュレーションを使うとよい。
版と出典
本ガイドは、OpenStax による College Physics 2e の公式無料PDF(第2版、2022年初版、CC BY-NC-SA 4.0)に基づく。入手先は https://openstax.org/details/books/college-physics-2e である。参照範囲は、序文、完全な目次、全章の序論と章末の節ごとの要約、解答集、および一部の節(マクスウェル方程式を扱う24.1節を含む)である。
