01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Gries, S. Th. (2017). Quantitative Corpus Linguistics with R: A Practical Introduction (2nd ed.). Routledge.
章の要約
第2版は6章、本文約270ページ。コーパス言語学の概説書であることを意図的に避けている。グリースは、本書がコーパス言語学者のためのRプログラミングに焦点を当て、前提とするのは基本的なコーパス言語学の知識だけで、数学やプログラミングの知識は不要であり、コンピュータの前でコードを動かしながら読むものだと述べている。初版との違いは、第2章に分散度(dispersion)が加わったこと、第3章にUnicodeの節の拡充、XMLの節、独自関数の作成の節が加わったこと、統計の章が第5章から第4章に移ったこと、そして第5章のケーススタディが新規であることである。
第1章:序論(Introduction)
コーパス言語学の本がなぜプログラミングを教えるのかを説明する章。著者は、スクリプトを使えば方法論上の選択を自分で制御でき、検索ソフトの設定や開発者に左右されず、より多くの入出力形式を扱え、Rは無料のオープンソースだと論じる。一節で本書の構成と学習の補助が紹介される:短い「Think Break」、解答付きの練習問題ボックス、さらなる推奨事項のボックス、コンパニオンサイトとディスカッショングループ。
第2章:四つの中心的コーパス言語学的方法(The Four Central Corpus-Linguistic Methods)
短い概念的な章で、コーパスを定義してその種類を区別したうえで、著者がコーパス研究の大半を還元できるとする四つの方法、すなわち頻度表、分散情報、語彙的共起(コロケーション)、(語彙)文法的共起(コンコーダンス)を示す。
第3章:Rの入門(An Introduction to R)
準備のための最も長い章で、Rを基礎から教える:データ構造、関数と引数、ベクトル、因子、データフレーム、リスト、条件式とループを含む初歩的なプログラミング、プログラミングの規則。相当な紙幅が、正規表現を使う場合と使わない場合の文字・文字列処理に割かれ、そのあとUnicodeとXML、ファイルとディレクトリの操作、独自関数の作成が続く。
第4章:基本的な統計概念と検定(Some Basic Statistical Notions and Tests)
意図的に短くされた章で、統計的な考え方を紹介する:変数とその役割、仮説の定式化と操作化、データ分析と有意性検定。従属変数の種類(カテゴリ型か数値型か)と関係する独立変数によって整理され、結果の報告で終わる。
第5章:コーパス言語学でRを使う:ケーススタディ(Using R in Corpus Linguistics: Case Studies)
本書の中心となる章で、この版の新規部分である。30を超えるケーススタディを、分散度、頻度・頻度表・キーワード、共起データ(コロケーション、コリゲーション、コロストラクション)、その他の応用の四つのグループに集める。例として、文字や語のn-gram、キーワード、分離不定詞、must の後の動詞コレクセム、『ハムレット』と『マクベス』の異なり語数・延べ語数比、語彙頻度プロファイル、CHAT形式の習得コーパスファイルなどがある。
第6章:次のステップ . . .(Next Steps . . .)
次に試す価値のあるRパッケージを示す非常に短い結びの章。付録と索引が続く。
主要概念
第1〜2章:理由と方法
- スクリプトによる分析:既成の検索ソフトに代えて、選択が見え、再現できるプログラムを使うこと。
- コーパス、頻度表、分散度、コロケーション、コンコーダンス:四つの中心的方法の語彙。
第3章:R
- ベクトル、因子、データフレーム、リスト:全体で使われるデータ構造。
- 正規表現:テキストの検索と置換の道具。
- UnicodeとXMLの扱い:符号化されたテキストや注釈付きコーパスの処理。
- ユーザー定義関数:第5章で再利用できるように分析をまとめる。
第4章:統計
- 仮説と有意性検定:問いを定式化・操作化し、結果が注目に値するかを確かめる。
- 従属変数と独立変数:紹介される検定の整理の原理。
第5章:ケーススタディ
- コロケーション、コリゲーション、コロストラクション:語彙的・文法的な共起の分析。
- 異なり語数・延べ語数比と語彙頻度プロファイル:応用で使われる語彙の尺度。
批判的分析
長所
- 実践重視の設計。 小さな応用例と大きなケーススタディを通して教え、Think Breakや解答付き練習問題ボックスがある。出版社は、コンパニオンサイトに注釈付きの約7,000行のコードとほとんどのデータセットがあると述べている。
- プログラミングや数学の前提が不要。 第1章は、基本的なコーパス言語学の知識だけを前提とすると述べている。
- ケーススタディの章。 新設の第5章は、BNC、COCA、COHAなどのコーパスを用いて、技法が現実のコーパスの問いにどう適用されるかを示す。
- 難しさを正直に伝えている。 序論は、寝る前に気軽に読める本ではなく、コンピュータの前で手を動かして読む必要があると警告している。
短所
- 概説書ではない。 著者は本書がコーパス言語学を概観しようとしないと述べており、コーパス設計や理論の問題は別の本で補う必要がある。
- 統計は簡略。 著者は第4章を短いものと述べており、統計モデリングが必要な読者は別の専門書が要る。著者は言語学者向けの自著の統計学書を挙げている。
- Rとコードファイルに依存している。 説明の多くはコンパニオンのコードにあり、本書のスクリプトは著者のファイル構成とデータを前提とする。
コースにおける位置づけ
コーパス分野の中でプログラミングに重点を置いた一冊である。マケナリー&ハーディの Corpus Linguistics: Method, Theory and Practice はコーパスの構築・注釈・分析を説明して分野を議論の中に位置づけ、チョマイ&クロフォードの Doing Corpus Linguistics は公開コーパスを使った段階的な最初の入門である。バード、クライン、ローパーの Natural Language Processing with Python とジュラフスキー&マーティンの Speech and Language Processing は計算言語学の教科書、グラスらの Language and Computers は技術的な専門知識を要しない言語技術の入門である。
グリースは、コーパス言語学の最初の講義を終え、四つの方法に慣れて、自分でそれらを実装したいときに読むとよい。PythonよりRを使いたい言語学者にとって、バード他に代わる自然な選択肢である。
本書の使い方
コーパスの入門講義を履修した言語学の大学院生と研究者に向く。プログラミング経験は不要だが、Rとコンパニオンファイルが入ったコンピュータが必要である。
読み方の計画:
- 中核: まず第2章で用語を確認し、次に第3章を通して読み、すべての例を実行する。練習問題ボックスを解き、解答と照らし合わせる。
- 次に: 自分のデータがあって検定したくなったら第4章。
- 応用: 第5章。自分のプロジェクトに最も近いケーススタディを選び、コードを改変する。頻度と共起のグループが最も汎用的である。
- 任意: 第3章のUnicodeとXMLの部分は、そのようなコーパスに出会うまで後回しでよい。第6章は今後の参考として。
