01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Csomay, E., & Crawford, W. J. (2024). Doing Corpus Linguistics (2nd ed.). Routledge.
章の要約
第2版(2024年、約180〜190ページ)は2016年の初版を改訂したもので、新しい練習問題、例、文献、世界の英語コーパスの詳しいリスト、テクスト中のパターンを見つける方法についての新しい節、そしてCohenの統計的方法(効果量)が加わった。三部構成の全9章と、最後の利用可能なコーパスのリストからなる。著者は比較的初心者の読者、すなわちおそらく初めてコーパス言語学に取り組み、統計の知識がほとんどないか、まったくない人に向けて書いている。本書の理論的枠組みはレジスター分析であり、著者はこれをDouglas BiberとSusan Conradの研究に負うとしている。検索インターフェースを次々に覚えなおす負担を学生にかけないよう、プロジェクトはMark Daviesが作成したオンライン・コーパス群を使い、大きなプロジェクトでは一つのフリーウェアを使う。
第1部 コーパス言語学とレジスター分析への導入:第1章:言語学、コーパス言語学、言語変異
規則と体系としての言語、コーパス言語学とは何か(真正な言語の分析)、レジスター・ジャンル・スタイルの違い、そして本書の概要を扱う。
第2章:言語分析へのレジスター(機能的)アプローチ
なぜレジスターが重要か、レジスター(機能的)分析とは何か、場面的特徴をどう記述し変数をどう特定するか、機能的解釈をどう与えるか、レジスター研究における分析単位を扱い、章末練習問題が付く。後の章では、結果を解釈するときにこの枠組みに立ち返るよう求められる。
第2部 既存コーパスの検索:第3章:コーパスを検索する
公開されているコーパスで、語、コロケート、nグラム、品詞タグを検索する方法を扱う。COCAやMICASEのようなコーパスも使われる。
第4章:公開コーパスを使ったプロジェクト
章全体が小規模なプロジェクトに充てられる。まず語と句に基づくもの、次に文法に基づくもので、同じ検索インターフェースで繰り返し練習できる。
第3部 自分のコーパスを作り、量的結果を分析し、データの意味を読み取る:第5章:自分のコーパスを作る
自作コーパス、コーパス・プロジェクトの決め方(かなりの時間がかかる)、著作権に注意したコーパスの構築、それを分析するためのソフトウェアを扱う。
第6章:基礎統計
なぜ統計分析が必要か、基本的な用語、概念、前提、そして統計結果の求め方を扱い、練習問題が付く。
第7章:統計的検定(分散分析、カイ二乗検定、ピアソン相関)
差の検定と関係の検定、その実行方法、そして効果量を扱い、練習問題が付く。
第8章:コーパス言語学を実践する
自分のプロジェクトのレジスター分析を、場面分析、言語分析、機能的解釈、報告という段階を追って行う。実例には、タイ語を母語とする英語使用者が書いた問題解決型エッセイのnグラムがある。出版社によれば、最終プロジェクトには論文とプレゼンテーションの両方が含まれる。
第9章:この先へ
本書の方法を超えた、より上級のコーパス研究を短く展望する。その中には、因子分析によって共起する言語特徴を特定する多次元分析が含まれる。
主要概念
第1部(第1〜2章)
- コーパス:原則に基づいて集められ、コンピュータのツールで分析される真正なテクストの集成。
- レジスター、ジャンル、スタイル:言語を使用場面と関係づける三つの見方。第1章で区別される。
- 場面的特徴:レジスター分析が最初に記述する、文脈の特徴(参加者、場面、目的)。
- 機能的解釈:言語パターンを、それが現れる場面によって説明すること。
第2部(第3〜4章)
- コロケート:偶然よりも高い頻度で共に現れる語。
- nグラム:4語の連鎖のような、繰り返し現れる語の連なり。
- 品詞タグ:文法に基づく検索を可能にする品詞のラベル。
第3部(第5〜9章)
- 特化コーパス:特定の研究課題に答えるために作られるコーパス。
- 標準化頻度:テクストを比較できるよう、共通のテクスト長にそろえた頻度。
- 差の検定と関係の検定:差には分散分析とカイ二乗検定、関係にはピアソン相関。
- 効果量:統計的に有意かどうかだけでなく、差がどれほど大きいか。
- 多次元分析:共起する特徴から変異の次元を特定すること。
批判的分析
長所
- 初心者向けに書かれている。 著者は統計の背景がほとんどない初めてのコーパス利用者をはっきりと想定しており、統計の章はなぜ統計が必要なのかから始まる。
- 一貫した枠組み。 レジスター分析が第2章からプロジェクトの章まで本書全体を貫いており、学生は特徴を数えるだけでなく、それを機能的に解釈することを学ぶ。
- プロジェクトで学ぶ。 第4章は公開コーパスでの小規模プロジェクトに充てられ、第3部は特化コーパスの構築から最終プロジェクトの報告までを案内する。一つの系統のオンライン・コーパスを使うので、技術的な負担が小さい。
- 改訂された版。 出版社は、新しい練習問題と例、世界の英語コーパスのリスト、テクスト中のパターンを見つけるための新しい節、効果量を挙げている。
短所
- 短く入門的である。 200ページに満たない本書が扱うのは数種類の検索と基本的な検定であり、プログラミングは教えない。第9章は多次元分析のような上級の方法を指し示すにとどまる。
- 特定の資源に結びついている。 プロジェクトはMark Daviesのオンライン・コーパスと特定のソフトウェアに依存している。インターフェースや利用条件は変わるので、指示の一部は更新が必要になるかもしれない。
- 主に英語と応用言語学。 本書は応用言語学とTESOLの学生を対象とし、コーパスのリストも英語を扱う。他の言語や計算言語学的アプローチを学ぶ学生には別の文献が必要である。
コースにおける位置づけ
本書は計算言語学・コーパス言語学のリストの中で、コーパスの方法への最もやさしい入門書である。McEnery and Hardieの Corpus Linguistics: Method, Theory and Practice は、この分野の歴史、論争、多様な方法へ進むための次の段階である。Griesの Quantitative Corpus Linguistics with R は、第6〜7章の統計をはるかに先へ進め、Rでのプログラミングを教える。
Glass, Dickinson, Brew and Meurersの Language and Computers は、コーパスの記述ではなく、コンピュータが言語をどう処理するかを専門知識なしで紹介する。Bird, Klein and Loperの Natural Language Processing with Python と、Jurafsky and Martinの Speech and Language Processing はコースの計算言語学側に属し、既製のツールでコーパスを検索する段階から自分でプログラムを書く段階へ進みたい学生に向いている。
本書の使い方
本書は、応用言語学、TESOL、英語学の学部生と大学院の初年次生、そしてコーパスの証拠を使いたい語学教師に向いている。統計やプログラミングの知識は不要であり、基本的な文法用語に慣れていると役に立つ。
- 中核: 第1〜4章。レジスターの枠組みはすべてのプロジェクトで使われるので、第2章は丁寧に読むこと。
- 研究プロジェクトのために: 第5〜8章を順に。著者が言うようにコーパス・プロジェクトには時間がかかるので、コーパスの計画は早めに始めること。
- 統計: 第6〜7章は、コーパスを作りながら第5章と並行して学べる。
- 先を見すえて: 第9章と利用可能なコーパスのリスト。
例を読むだけでなく、すべての検索を自分で行い、検索の設定を記録し、第4章のプロジェクトを別の語やレジスターで繰り返すとよい。最終プロジェクトの論文とプレゼンテーションには十分な時間を確保すること。
