01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Murray, A. (2023). Information Technology Law: The Law and Society (5th ed.). Oxford University Press.
章の要約
第5版は6部25章、約730ページである。出版社は「明確に区分された部構成」を持つと説明する。本書はまず情報社会を定義し、それをどう規制しうるかを論じ、続いてインターネット・ガバナンス、プライバシーと監視、知的財産、デジタル領域での商取引へと進む。出版社はまた、デジタルな公共圏、デジタル・ディバイド、ゲームを含む仮想環境、Web 3.0がもたらす課題への言及を挙げている。各章には、法理論を文脈の中に置くハイライトとケーススタディのボックスがあるという。
第I部 第1〜4章:The World of Bits(ビットの世界)、The Network of Networks(ネットワークのネットワーク)、Net Neutrality(ネット中立性)、Regulating the Information Society(情報社会の規制)
冒頭の部は、個別の法分野に入る前に舞台を整える。章題から見ると、第1章と第2章はデジタル環境とそれが走るネットワークを紹介し、第3章はネット中立性を、第4章は情報社会をどう規制するかを扱う。出版社は、本書がまず情報社会を定義し、その規制を論じてから、後の部で個別の分野に入ると述べている。
第II部 第5〜7章:Cyber-speech(サイバー空間の言論)、Social Networking and Antisocial Conduct(ソーシャルネットワーキングと反社会的行為)、Defamation(名誉毀損)
第II部はコンテンツを扱う。3つの章が、オンライン上の言論、ソーシャルネットワーキングと反社会的行為、名誉毀損を論じる。
第III部 第8〜15章:デジタル・コンテンツと知的財産権
最も長い部である。冒頭は「Intellectual Property Rights and the Information Society」(第8章)と「Software」(第9章)で、続いて著作権が順に扱われる。「Digital Creatives and Copyright Law」(第10章)、「Copyright in the Digital Environment」(第11章)、「Copyright Infringement in the Digital Environment」(第12章)である。次に「Databases」(第13章)が来て、最後にブランドを扱う2章、「Branding, Trade Marks and Domain Names」(第14章)と「Brand Identities, Search Engines, and Secondary Markets」(第15章)で終わる。
第IV部 第16〜18章:Electronic Contracts(電子契約)、Electronic Payments and Cryptocurrency(電子決済と暗号通貨)、Consumer Protection(消費者保護)
電子商取引の部は、電子的に結ばれる契約、暗号通貨を含む電子決済、そして消費者保護を扱う。出版社の紹介は、デジタル領域での商取引を本書の主要なテーマの一つに挙げている。
第V部 第19〜21章:Computer Misuse(コンピュータの濫用)、Obscenity in the Information Society(情報社会におけるわいせつ)、Crime and Law Enforcement in the Information Society(情報社会における犯罪と法執行)
第V部は「情報社会における犯罪行為」と題され、コンピュータの濫用、わいせつ、そして犯罪と法執行というより広い問題を扱う。
第VI部 第22〜25章:データ保護、個人データの国際取引、国家による監視とデータ保持
最後の部はデータ・プライバシーである。「Data Protection: The Legal Framework」(第22章)と「Data Protection: Rights and Obligations」(第23章)に続いて「The International Trade in Personal Data」(第24章)が置かれ、本書は「State Surveillance and Data Retention」(第25章)で終わる。
主要概念
第I部:情報社会
- ネット中立性:ネットワーク上のトラフィックを平等に扱うべきだという原則で、独立した一章が充てられている。
- 情報社会の規制:ネットワーク化された環境をどう統治できるかという問いで、本書の残りの枠組みとなる。
第II部:コンテンツ
- サイバー空間の言論と名誉毀損:表現と名誉に関する法が、オンラインのコミュニケーションにどう適用されるか。
- ソーシャルネットワーキングと反社会的行為:第6章の主題で、オンライン・コミュニティでの有害な行動。
第III部:デジタル・コンテンツと知的財産
- デジタル環境における著作権:著作権とその侵害が、デジタルな著作物にどう適用されるか。
- データベース:データの集積の保護。
- 商標とドメイン名:ブランドとインターネット上のアドレスとの関係。第15章では検索エンジンと二次市場も扱われる。
第IV〜VI部
- 電子契約と電子決済:契約の成立と支払い(暗号通貨を含む)。
- コンピュータの濫用:コンピュータの濫用に対する刑事責任で、第19章の主題。
- データ保護とデータ保持:データ保護の法的枠組み、権利と義務、個人データの国際移転、そして国家による監視。
批判的分析
長所
- 明快な部構成。 6つの部は、情報社会の性質から、コンテンツ、知的財産、商取引、犯罪を経て、データ・プライバシーへと進む。著作権やデータ保護など一つの分野だけが必要な読者は、順に通読せずに該当の部から入れる。
- 一冊での幅広さ。 25章が、言論、名誉毀損、知的財産、電子商取引、コンピュータ犯罪、データ保護、監視をカバーする。これらの主題にまたがる科目なら、一冊のテキストで教えられる。
- 社会的文脈の中の法。 タイトルと出版社の紹介は、法的ルールと広い意味での「情報社会」との関係を強調しており、デジタルな公共圏やデジタル・ディバイドへの言及もある。そのため、ルールが何かだけでなく、なぜ規制がそのような形をとるのかを問う小論文の課題にも使える。
- 学習の支援。 出版社は、本文中のハイライトとケーススタディのボックスのほか、章末問題の解答の概要、ウェブリンク、フラッシュカード式の用語集といったオンライン資料を挙げている。
短所
- 分量。 約730ページ、25章という規模は、たいていの単一科目が使い切れる量を超えており、第III部だけで8章を占める。科目ごとに取捨選択が必要になる。
- 内容の範囲。 目次には人工知能に特化した章がなく、出版社もWeb 3.0を将来の課題として挙げるにとどまる。最新の技術を追う読者は、最新の資料を別に必要とする。
- 変化の速い分野。 本版は2023年のものである。データ保護、オンライン・コンテンツの規制、監視法は変化が速いため、これらの部の法的な詳細は、現行の制定法や判決と照らして確かめる必要がある。
コースにおける位置づけ
本書は、このコースの情報技術法の系列における本格的な教科書で、挙げられている本のなかでは最も範囲が広い。イアン・ロイドのInformation Technology Lawは、プライバシー、データ保護、サイバー犯罪、知的財産、電子商取引、消費者の権利と、同様の幅の主題を扱っており、代わりの本として、あるいは比較のための第二のテキストとして自然である。
知的財産の側では、BentlyらのIntellectual Property Lawが、著作権、特許、意匠、商標、パッシング・オフ、秘密保持を専門的に扱っており、第III部の各章が一般的なIT法の教科書より深い説明を要するときに頼れる本である。ロビン・ジェイコブ、マシュー・フィッシャー、リン・チェイヴのGuidebook to Intellectual Propertyは、脚注のない短い入門書で、知的財産の予備知識のない読者が第III部に入る前に向いている。ジェームズ・ボイルのThe Public Domainは、知的財産と創造性を論じる批判的で論証中心の本で、著作権の各章を補う。
本書の使い方
対象は、情報技術法、インターネット法、サイバー法の科目を取る学生(通常は法学部の上級年次)と、この分野の見取り図を必要とする大学院生や実務家である。出版社は前提知識を示していない。契約法と公法の初歩を学んでおくのが、特に第IV部と第VI部のために適切な土台となる。
実際的な進め方は次のとおり。
- 中核: 本書の規制へのアプローチを理解するために第I部を読み、そのあと科目が扱う部へ進む。一般的な科目なら、通常は、コンテンツを扱う第5〜7章、第III部から知的財産の1〜2章、第IV部の電子商取引の章、第VI部のデータ保護の章である。
- 選択的に: 第III部は8章あり、たいていの科目では著作権と商標の章だけを取る。第V部は刑法の要素を含む科目に向く。
- 本文と併用: 出版社が用意する章末問題、解答の概要、フラッシュカード式の用語集を使う。また、法が速く動く分野なので、主要判例と、データ保護やオンライン・コンテンツに関する現行の立法を読む。
