01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Harris, D., O'Boyle, M., Bates, E., & Buckley, C. (2023). Harris, O'Boyle, and Warbrick: Law of the European Convention on Human Rights (5th ed.). Oxford University Press.
章の要約
約1,000ページ、全24章・三部からなる体系書で、条約の構造に沿って、まず背景、次に実施の仕組み、そして権利そのものを条文順に扱う。初版は1995年に Harris、O'Boyle、Warbrick によって刊行された。ノッティンガム大学人権法センターは、第5版を、欧州人権裁判所の活動と条約が保護する権利についての、全面的に更新された厳密で包括的な分析と紹介している。著者は David Harris、Michael O'Boyle(元同裁判所次席書記官)、Ed Bates、Carla Buckley である。
第I部:The European Convention on Human Rights in Context(第1章)
条約をその背景の中に位置づける1章。
第II部:Enforcement Machinery(第2~4章)
申立ての受理可能性(第2章)、欧州人権裁判所の組織・実務・手続(第3章)、裁判所判決の執行(第4章)。この部は45ページから205ページまでで、申立てが満たすべき手続的条件と、判決後に何が起こるかを扱う。
第III部:The Rights Guaranteed(第5~24章)
本書の大部分で約785ページ。権利を条約の順に取り上げる。
- 第5~10章:2条(生命への権利)、3条(拷問または非人道的・品位を傷つける取扱いもしくは刑罰の禁止)、4条(奴隷、隷属、強制労働の禁止)、5条(身体の自由と安全)、6条(公正な裁判)、7条(遡及的な刑罰の禁止)。
- 第11~15章:8~11条の総論、続いて8条(私生活・家族生活、住居、通信)、9条(思想、良心、宗教)、10条(表現)、11条(集会・結社)。
- 第16~20章:12条(婚姻し家族を形成する権利)、13条(実効的な国内的救済)、14条と第12議定書(無差別)、15条(戦争その他の公の緊急事態における逸脱)、16~18条(権利に対するその他の制限)。
- 第21~24章:第1議定書1条(財産)、第1議定書2条(教育)、第1議定書3条(自由選挙)、および第4、第6、第7、第13議定書。
主要概念
第I~II部:背景と仕組み
- 受理可能性:裁判所が審理する前に申立てが満たすべき条件。
- 裁判所の組織と手続:事件がどう処理されるか。
- 判決の執行:違反が認定された後に国家が何をなすべきか。
第III部:権利
- 条約の順序に沿った権利:章は、生命への権利、拷問・奴隷の禁止から、身体の自由と公正な裁判を経て、独自の総論の章を持つ8~11条へと進む。
- 8~11条の総論:干渉とその正当化に関する共通の分析。
- 無差別(14条、第12議定書):条約上の権利に関する保護、およびそれを超える保護。
- 逸脱(15条):緊急時における義務の停止。
- 議定書上の権利:財産、教育、自由選挙、およびその他の議定書。
批判的分析
長所
- 体系的な構造:三部構成により、他の部分を読まなくても、任意の条文や手続規則に直接たどり着ける。
- 裁判所に近い著者:Michael O'Boyle は同裁判所の元次席書記官である。初版は1995年で、本書は判例の長い発展を引き継いでいる。
- 権利と議定書の網羅:中心となる2~11条から12~18条、さらに財産、教育、選挙などに関する議定書にまで及ぶ。
- 8~11条の総論の独立章:これら4か条が共通の分析枠組みを持つことを構成に反映している。
- 手続面の詳細:受理可能性、手続、執行が約160ページの独立した部になっており、事件がストラスブールにどう至りどう終わるかを知る必要がある読者に適している。
短所
- 判例の時点:2023年版は後の判決に及ばないため、判例は最新の資料で確認する必要がある。
- 分量:約1,000ページで、参照および長期の学習のための本である。最初の概観だけを求める読者には重い。
- ストラスブール中心:本書は裁判所の判決を通じて条約を分析する。英国の1998年人権法のもとでの国内的な扱いは別の主題で、英国を中心とする教科書で学ぶのが適している。
コースにおける位置づけ
人権法の一覧にある書物の中で、本書は条約についての詳細な参照書である。Amos の Human Rights Law は1998年人権法と条約を軸とする英国の人権法の教科書である。Kavanagh の The Collaborative Constitution は英国に注目しつつ民主主義における権利保護を論じる研究書、Möller の The Global Model of Constitutional Rights は理論書である。Gearty の Civil Liberties、Liberty and Security、On Fantasy Island と Wacks の Privacy: A Very Short Introduction は、特定の主題を扱うより短い書物である。
Harris、O'Boyle and Warbrick は、一般的な教科書の後に、ある条文について裁判所が何を判示したかを正確に知る必要が生じたときに頼る本である。
本書の使い方
条約と1998年人権法を紹介した人権法または公法の講義を修了していることが前提とされる。上級の学部生、大学院生、実務家に向いている。
実践的な進め方は次のとおり。
- 最初に第I部と、受理可能性と手続を扱う第II部の章を読む。ストラスブールのどの判決を読むときにも役立つ。
- 中核:2、3、5、6、8~11条の章。8条の前に総論の章を読む。
- 主題別:講義や論文が及ぶときに12~14条と議定書の章。
- 参照用:判決を読むときに該当する条文の章に当たり、その後の判例を最新の資料で確認する。
