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アシュワース刑法原論 cover

法学

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アシュワース刑法原論

Jeremy Horder

英語原題: Ashworth's Principles of Criminal Law

イングランド刑法の規則の背後にある原理を説明する、理論色の強い学部生向けテキスト。刑法の運用とその保護対象、総論(行為、故意・過失、抗弁)、殺人、性犯罪、財産犯罪、金融犯罪、共犯および未完成犯罪を扱う。

難易度レベル
中級
学術レベル
学部
刑事法刑事責任刑事上の抗弁刑事司法殺人罪共犯

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Horder, J. (2019). Ashworth's Principles of Criminal Law (9th ed.). Oxford University Press.

章の要約

背景とアプローチ

ジェレミー・ホーダーが担当した第9版は、刑法の授業で扱う主題を網羅しつつ、法の原則と理論的基礎を説明し、文脈の中で分析するという本書独自の目的を保っている。出版社は「他に類を見ない理論性」を謳う。全13章は、刑法がどう機能し何を保護するかに始まり、総論(行為、能力、過失、抗弁)を経て、個別の犯罪を扱い、共犯と未完成犯罪で終わる。小規模事業を含む事業活動を注目の中心に近づけることが本書の明示された目的で、行政取締的犯罪や金融犯罪の扱いに表れている。

第1章:刑事法の過程(Criminal Law Process)

公的な裁量、実際に運用される刑法、官僚制の役割を検討し、量刑権限を概説する。刑事司法職員の意思決定の型は、原則・規則・基準と並ぶ4本柱の一つとされ、争われる裁判を減らすための手法によって構造化される。

第2章:刑法の歴史(Criminal Law History)

主な焦点は、宗教、とくに聖書の思想が刑法に与えた影響で、窃盗、同性愛、殺人に対する刑法の態度の説明になる。法典化の試みも検討し、法の発展が一貫した道徳的進歩ではなかったと注意を促し、最後に市民的自由への脅威を論じる。

第3章:刑法の価値(Criminal Law Values)

犯罪化が守る価値を検討する。身体の完全性や性的自律のような内在的価値と、国家の安全、企業統治や公的生活における誠実性、福祉制度といった公共財を区別する。

第4章:刑法の織物(Criminal Law Fabric)

刑法を構成する規則・基準・原則を分析し、二次立法や事業を規制する犯罪に注意を払う。人権や自律を含め法が尊重すべき価値、危害原理と不道徳な行為を処罰することをめぐる議論を説明し、厳格解釈のような犯罪構成と解釈の原則を扱う。

第5章:犯罪行為:行為要件、因果関係、許容(Criminal Conduct: Actus Reus, Causation, and Permissions)

総論の始まりである。非自発的行為、状態犯や所持が自発的行為の要件に突きつける課題、不作為、因果関係、正当化される行為を扱う。

第6章:刑事責任能力、犯意、過失(Criminal Capacity, Mens Rea, and Fault)

まず、幼年と心神喪失を含む責任能力と、法人の刑事責任の特殊な要因を扱う。次に過失要件、それを要求することへの賛否、故意や無謀といった主な種類を検討する。

第7章:免責的抗弁(Excusatory Defences)

過失要素があっても非難可能性が欠ける場合の抗弁を扱い、強迫と強制、合理的な錯誤、誤想的抗弁を含み、酩酊も取り上げる。

第8章:殺人(Homicide)

謀殺、謀殺に対する抗弁、非故意の故殺を扱い、議会が新設した犯罪(児童や弱い成人の死を引き起こす、または許すこと、運転による致死)にも触れたうえで、殺人法の構造が適切かを問う。

第9章:人身に対する非致死的侵害(Non-Fatal Violations of the Person)

前半は人身に対する犯罪で、同意の限界と改革案を含む。後半は2003年性犯罪法の性犯罪で、同意の定義が中心であり、法の成功と失敗の評価で終わる。

第10章:財産犯罪(Property Offences)

窃盗が最も詳しく扱われ、ほかに無断での乗り物の取得、強盗、恐喝、侵入窃盗、盗品関与、器物損壊がある。電子的な保有や移転にまで広げられた1968年の窃盗の定義が広すぎるようになっていないかを問う。

第11章:金融犯罪(Financial Crime)

詐欺、贈収賄、資金洗浄を、企業活動をどう反映するか、なぜ積極的な訴追が重要かに注目して検討する。

第12章:共犯(Complicity)

主犯と従犯を区別し、行為要素と過失要素、共同事業、異なる結果に対する従犯責任、派生的責任、特別の抗弁を分析する。

第13章:未完成犯罪(Inchoate Offences)

未完成犯罪を説明し、未遂を処罰する理由とその要素、続いて共謀、犯罪の奨励・援助、自発的な放棄、未完成犯罪の位置づけを扱う。

主要概念

第1〜4章:基礎

  • 公的裁量:警察や検察など職員の判断が、刑法の実際の運用を形づくる。
  • 内在的価値と公共財:刑法が保護する二種類の利益。
  • 危害原理:犯罪化は危害によって正当化されるべきだという考えで、不道徳の処罰を支持する議論と対置される。

第5〜7章:総論

  • 自発的行為と不作為:行為要件とその限界。
  • 犯意と過失:故意、無謀、過失を要求する理由。
  • 免責:強迫など、非難可能性の欠如に基づく抗弁。

第8〜13章:犯罪と拡張

  • 殺人の構造:謀殺、故殺、特別な殺人犯罪。
  • 同意:非致死的侵害と性犯罪の中心。
  • 共犯と未完成犯罪:援助、合意、未遂の責任。

批判的分析

長所

  • 規則の前に原則。 最初の4章が過程、歴史、価値、刑法の構成にあてられ、後の教義的な章に枠組みを与える。
  • 法の運用への注目。 公的裁量と官僚的管理が背景ではなく主題の一部として扱われる。
  • 規則の評価。 各章の冒頭と結びで、たとえば殺人法の構造、窃盗の定義、性犯罪が適切かを問う。
  • 事業・金融犯罪。 第11章と、第3・4章の事業関連の犯罪の議論は、企業に関わる犯罪を現代刑法の中心に据える。

短所

  • 理論的アプローチは要求が高い。 出版社が「他に類を見ない理論性」と言うとおり、暗記用の簡潔な規則の説明だけを求める学生には、より簡潔な教科書が必要かもしれない。
  • 範囲。 犯罪の章は選択的で(殺人、非致死的侵害と性犯罪、財産・金融犯罪)、公共秩序や薬物の犯罪は章題にない。
  • 法には時点がある。 本版は2019年刊で、その後の立法や判例は含まれない。

コースにおける位置づけ

掲載された刑法の書物の中で、本書は理論を主導とする学部向けの教科書である。ハリングのCriminal Lawは歴史、責任、犯罪、抗弁を扱う学部向け入門、ノリーのCrime, Reason and Historyは批判的入門、ウェルズのReconstructing Criminal Lawは教材・資料集、シメスターとサリヴァンのCriminal Law: Theory and Doctrineは教義と理論を組み合わせた詳細な叙述である。

規則だけでなく理由も知りたい学生の主教材として、あるいは、より標準的な教科書の後の2冊目として使える。

本書の使い方

最初か2番目の刑法の授業を取る学部の法学生、とくに授業が記述だけでなく評価を求める場合に向く。法制度の一般的な入門以上の予備知識は前提としない。

進め方:第1〜4章を枠組みとして早めに読む。総論の講義に合わせて第5〜7章を学び、シラバスの進行に応じて犯罪の章(第8〜11章)を読み、第12・13章で終える。犯罪の各章は法の評価で結ばれており、論述問題の出発点になる。出版社が挙げるオンライン資料(文献目録とウェブリンク)はさらなる読書を支える。