01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Berglee, R., Hidalgo Monroy Wohlgemuth, N., Yaukey, P., Johnson, T., Liner, R., Lodhi, M. A., Stepp, J., & Hawkes, J. (2024). World Regional Geography: People, Places, and Globalization. LOUIS: The Louisiana Library Network. Free official edition: https://louis.pressbooks.pub/worldregionalgeography/
章の要約
このオープン教科書は、2012年に Flatworld Knowledge から刊行され、2016年にミネソタ大学図書館がほとんど手を加えずに再刊した Royal Berglee の World Regional Geography を、LOUIS が改作したものである。LOUIS 版は、高校生が大学の授業を履修するデュアル・エンロールメント向けに作られた。帰属表示には変更点が列挙されている。いくつかの章での内容の並べ替えと拡充(とくに第8、9、11章で大幅)、新しい図版、埋め込み動画と対話型の H5P 演習、アクセシビリティ対応である。全13章で、地理学の概念への導入と、世界の「領域(realm)」を扱う12章から成る。各節は学習目標で始まり、要点、討論・学習のための問い、地図上で場所を確認する演習、アクティビティで終わる。各章の最後には箇条書きの章のまとめがある。
第1章:世界への導入
本書全体の概念的な土台で、四つの節から成る。「地理学の基礎」は、学問としての地理学、緯度と経度、時間帯、地域の種類、世界の領域区分を扱い、比較の物差しとして身近な州(本文ではケンタッキー州)を使うことを勧める。「環境と人間活動」は A〜E と H の気候区分、バイオーム、森林破壊、気候変動、プレートテクトニクスを導入する。「人口と文化」は人口転換、人口ピラミッド、移住、人種とエスニシティ、言語と宗教を扱う。「グローバル化と開発」は、後のすべての章で使われる考え方を示す。グローバル化の二つの波(ヨーロッパの植民地主義と冷戦後の時代)、機会と優位、農村から都市への移動、中核・周辺の空間関係、国民所得を得る方法、経済発展の指標、そして政治地理学への短い導入である。
第2章:ヨーロッパ
自然環境と資源、近代ヨーロッパの背後にある歴史的なパターン(植民地主義、農業革命と産業革命、国民国家、権限移譲・分離、遠心力と求心力)、ブリテン諸島の各部分を含む西ヨーロッパの長い地域巡り、そして冷戦後の東ヨーロッパの移行を扱い、ユーゴスラビアの解体を分離の主要な例とする。
第3章:ロシア
ロシアの自然区分と気候、帝政ロシアの拡大と環境問題、ソ連の中央計画経済、冷戦、ソ連崩壊後の移行、そしてヨーロッパ側の中核からシベリア、極東を経てカフカスと南カフカスに至るロシアの諸地域を扱う。
第4章:北アメリカ
合衆国とカナダを一つの領域として扱う。初期の発展、西部への入植、工業化とグローバル化、「人種のるつぼ」、ヒスパニック系とアフリカ系アメリカ人の人口、宗教の地理、カナダの州と準州、自然地理、イギリス系とフランス系の分断、経済、そして北東部の中核から北部に至る地域巡りである。
第5章:中部アメリカ
植民地主義が生んだリムランドとメインランドの区分、マヤとアステカ、スペイン植民都市、メキシコの中核と周辺、社会秩序、NAFTA とマキラドーラ、麻薬取引、中央アメリカの高度による帯状分布と政治地理、カリブ海の植民地史、観光、オフショア金融、音楽、そして熱帯低気圧についての独立した節を扱う。
第6章:南アメリカ
長い導入部が自然地理、イベリア両国による大陸の分割、ギアナ地方、文化地域、都市化、不平等、グローバル化を扱う。続いてベネズエラとコロンビア、アンデス諸国、ブラジルの中核とアマゾンの周辺、南米南部(サザンコーン)の地域別の節がある。
第7章:サハラ以南アフリカ
自然地理、奴隷貿易、植民地化と独立、この領域の経済、言語、宗教、民族紛争、HIV とエイズ、観光、そして西・中部・東・南部アフリカを主に国ごとに扱い、内戦と紛争鉱物に注意を向ける。
第8章:北アフリカと南西アジア
地域を扱う章の中で最も長い。文化の炉床、水、アラブの春、ムハンマド、イスラームの拡大とイスラーム法を扱い、続いて北アフリカとアフリカ遷移帯、イスラエルとその近隣諸国、アラビア半島と石油、イラク・トルコ・イラン、中央アジアとアフガニスタンを概観する。
第9章:南アジア
自然地理、モンスーン、植民地化と人口、周辺国とカシミール、拡充されたパキスタンとバングラデシュの節、インドの人々、経済、地域間の対照、そしてヒンドゥー教とカーストからシク教までの、この領域の宗教を扱う。
第10章:東アジア
中国の自然地理、河川流域と三峡ダム、王朝と近代中国の成立、香港と深圳、台湾、チベット、モンゴルといった周縁、そして日本と南北朝鮮を扱う。
第11〜13章:東南アジア/オーストラリアとニュージーランド/太平洋と南極
東南アジアは大陸部と島嶼部に分けて扱われ、植民地主義と華僑が全体を貫く主題となる。オーストラリアとニュージーランドは、孤立性、植民地主義、中核・周辺のパターン、アボリジニとマオリの問題、経済の変化を通して描かれる。最終章はメラネシア、ミクロネシア、ポリネシアと、南極条約とオゾン層破壊を含む南極を扱う。
主要概念
第1章:世界への導入
- 領域と地域:領域は複数の地域を含む世界の大区分であり、地域には形式地域、機能地域、知覚(ヴァナキュラー)地域がある。
- 気候区分:気候と人間の居住を結びつけるために全体を通じて使われる A〜E と H の区分。
- 人口転換:社会が都市化・工業化するにつれて出生率と死亡率が変化していく段階。
- 中核・周辺の空間関係:豊かな都市の中核と資源を供給する周辺のまわりに経済活動が組織される関係で、ローカルからグローバルまでのスケールで見られる。
- 農村から都市への移動:都市にある機会と優位に引き寄せられて起こる移住。
第2〜7章:ヨーロッパからサハラ以南アフリカまで
- 遠心力と求心力:国家を分裂させる力と統合する力。
- 分離と超国家主義:国家の解体(ユーゴスラビア)と主権の共有(欧州連合)。
- リムランドとメインランド:中部アメリカの、プランテーションを基盤とする沿岸部・島嶼部と、アシエンダを基盤とする内陸部。
- 高度による帯状分布:熱帯の高地における気候と土地利用の垂直的な帯。
- インフォーマル部門:政府の規制の外にある経済活動で、サハラ以南アフリカで目立つ。
第8〜13章:北アフリカから南極まで
- 文化の炉床:農業や宗教などの革新が生まれ、広がっていった場所。
- アフリカ遷移帯:サハラ砂漠が熱帯アフリカと接し、イスラームがキリスト教と接する帯状の地域。
- モンスーン:南アジアの農業と洪水を左右する季節的な風向の逆転。
- 経済特区:外国からの投資を呼び込むための中国の沿岸地域。
- 孤立の地理:距離がオーストラリアと太平洋の生態、居住、経済に与える影響。
批判的分析
長所
- 無料でオープンなライセンス。 本書全体がオンラインで、また EPUB と PDF で CC BY-NC-SA ライセンスのもとに公開されており、Moodle と Canvas 向けの対応コースもある。教員は自由に採用し、改変し、並べ替えることができる。
- 一貫した分析の道具立て。 第1章は少数の概念(領域、気候区分、中核・周辺、農村から都市への移動、機会と優位、発展の段階)を示し、地域を扱うすべての章がそれを適用する。これにより学生は地域を体系的に比較しやすくなる。
- 初学者向けの作り。 各節の学習目標、要点、地図演習、学習のための問い、対話型のアクティビティは、1年生やデュアル・エンロールメントの学生に向いている。著者紹介からは、入門的な地理学を教えてきた長い経験がうかがえる。
短所
- 大部分は2012年のテキスト。 2016年版は2012年の原文を大きく変更・更新していないと明記しており、LOUIS による改訂も更新の程度が一様ではない。2022年の出来事、たとえばロシアのウクライナ侵攻に触れる箇所がある一方で、多くの数値や枠組みは2010年前後のままである。NAFTA はいまだに北米の貿易協定として扱われ、オーストラリアの人口は2010年の数値で示され、日本は世界第2位の経済大国の座を最近中国に譲った国として論じられている。
- 事実の誤り。 東アジアの章のまとめは香港の中国返還を1997年ではなく1998年とし、北アフリカと南西アジアの章のまとめはパレスチナ分割を1947年の国連分割案ではなく1945年としている。第1章は人口転換モデルをウォーレン・トンプソンに帰したうえで、ロストウの経済成長段階を「ロストウの DTM」として示しており、二つの異なるモデルを混同している。
- 記述的でアメリカ中心。 地域の章の多くは記述的な概観であり、比較はしばしばアメリカの立場から組み立てられている(物差しとしてのケンタッキー州、中部アメリカにおける合衆国の利害)。人文地理学の現代的な論争はほとんど扱われない。
コースにおける位置づけ
人文地理学入門のリストの中で、本書は地域的な概説書である。Dorrell と Henderson の Introduction to Human Geography は、人口、文化、政治、経済、都市化を主題別に扱う無料の入門書である。一方は系統的、他方は地域的で、二冊は互いに補い合う。Berglee の第1章が簡単にしか扱わない概念については、Dorrell と Henderson の章を使う学生も多いだろう。Daley と Klinke の Human Geography: A Very Short Introduction は短く新しい入口で、この教科書が主に記述的に扱う不平等、正義、気候変動の問いを持ち込んでいる。
残る二冊はもっと後の段階のための本である。Aitken と Valentine の Approaches to Human Geography は人文地理学の背後にある哲学と理論を説明し、The Dictionary of Human Geography は概念と論争についての署名入り項目から成る事典である。どちらも、中核・周辺や人口転換など、本書で出会った概念を確かめたり深めたりするのに役立つ。
本書の使い方
本書は大学の入門授業とデュアル・エンロールメントの学生向けに書かれており、地理学の予備知識を必要としない。1学期の世界地誌の授業や、グローバル・スタディーズの教養授業に向いている。
実践的な読み方:
- まず第1章を通読する。 後のすべての章がその概念と気候区分に依拠している。グローバル化と開発を扱う1.4節が最も重要である。
- 授業に合わせて領域を選ぶ。 1学期で12の領域すべてを扱うことはまれである。各章の導入節(「Introducing the Realm」)がしっかりした概観を与えるので、地域や国の節は抜粋して読めばよい。
- 章末の素材を積極的に使う。 白地図で地図演習を行い、討論・学習のための問いに答え、試験の前には各章のまとめを読む。
- 古くなる事実を確かめる。 人口、経済、政治の数値は最新の地図帳や統計データベースと照合し、発展に関する部分は、人口転換モデルとロストウのモデルを区別して示す人文地理学の教科書と並べて読む。
版と出典
本ガイドは、LOUIS: The Louisiana Library Network が Pressbooks で公開している公式の無料オンライン版(2024年著作権、CC BY-NC-SA 4.0)、https://louis.pressbooks.pub/worldregionalgeography/ に基づく。序文、著者紹介、帰属表示、目次全体、全13章のすべての節の学習目標、節見出し、要点、学習のための問い、すべての章末のまとめを参照し、第1章の1.1節と1.4節は大部分を読んだ。
