01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Studenmund, A. H. (2016). Using Econometrics: A Practical Guide (7th ed.). Pearson.
章の要約
第7版は16章と二つの付録(解答と統計表)からなる。ピアソン社は本書を、単一方程式の線形回帰分析に焦点を当て、行列代数を用いず、証明と微積分を脚注や演習問題に回した初歩的な計量経済学への入門書と説明している。章の並びは三つのまとまりに分かれる。回帰モデルの構築と検定(第1〜5章)、応用の場面で生じる問題(第6〜11章)、基本モデルを超える拡張(第12〜16章)である。この版では、本文中の例と演習問題のすべてがStataで推定されている。
第1章:回帰分析の概観
冒頭の章は、計量経済学と回帰分析、すなわち本書の残りの部分で展開される単一方程式の線形モデルを導入する。
第2章:最小二乗法
本書全体の土台となる推定手法である最小二乗法(OLS)を提示する。
第3章:回帰分析の使い方を学ぶ
題名が示すとおり、回帰を実際に使うことを扱う章で、第4章の形式的な仮定より前に置かれている。
第4章:古典的モデル
OLSを検討する際の前提となる仮定の集まり、すなわち古典的モデルを示す。後に続く定式化、多重共線性、系列相関、不均一分散の章は、現実のデータでこれらの仮定が満たされない状況を扱う。
第5章:仮説検定と統計的推測
回帰係数に関する仮説検定と統計的推測を扱う。ピアソン社は、この版で拡充された話題としてF検定と信頼区間を挙げている。
第6〜7章:定式化:説明変数の選択/定式化:関数形の選択
方程式の定式化を扱う二つの章で、どの説明変数を含めるか、どのような関数形を与えるかを論じる。ピアソン社は本書のアプローチを実践的で例を重視したものと説明しており、目次の上でその姿勢が最もよく表れているのが、第3章・第11章とあわせたこれらの章である。
第8〜10章:多重共線性/系列相関/不均一分散
古典的仮定からの三つの典型的な逸脱で、それぞれに一つの章が充てられている。第7版で追加された内容には、一般化最小二乗法のプレイス=ウィンステン法(系列相関への対処法)と、ブロイシュ=ペーガン検定(不均一分散の検定)が含まれる。
第11章:自分で回帰分析プロジェクトを行う
題名のとおり、自分自身の回帰分析を実施することに充てられた章で、最初の10章の内容をまとめ上げる。
第12〜16章:時系列モデル/ダミー従属変数の手法/連立方程式/予測/実験データとパネルデータ
最後の5章は単一方程式モデルを拡張する。動学的な時系列モデル(この版で拡充された話題の一つにディッキー=フラー検定がある)、従属変数がダミーであるモデル、連立方程式体系、予測、そして実験データとパネルデータである。ピアソン社によれば、この版では表記と説明が簡潔にされており、特に動学方程式、ダミー従属変数、操作変数、パネルデータについてそうである。
主要概念
第1〜5章:回帰モデル
- 最小二乗法:残差の二乗和を最小にするように係数を選ぶ推定量。
- 古典的仮定:OLSが望ましい性質をもつための条件で、本書の残りの部分の基準点となる。
- 仮説検定と統計的推測:F検定を含む、回帰係数についての検定と信頼区間。
第6〜11章:応用上の問題
- 定式化:方程式の変数と関数形を選ぶこと。
- 多重共線性、系列相関、不均一分散:古典的仮定からの逸脱で、それぞれに固有の検定と対処法がある。
- 一般化最小二乗法:系列相関を補正する推定法。本書ではプレイス=ウィンステン形式で扱われる。
第12〜16章:拡張
- 動学モデルと時系列モデル:ラグ付き変数を含む方程式と、非定常性を調べるディッキー=フラー検定のような検定。
- ダミー従属変数:はい/いいえ型の結果を扱うモデル。
- 連立方程式:説明変数が従属変数と同時に決まる体系。操作変数は、ピアソン社がこの版で説明を明確にしたと述べる話題の一つである。
- パネルデータ:同じ単位を時間を通じて観測したデータ。
批判的分析
長所
- 実践的で直感的な設計。 ピアソン社は、行列代数を使わず、証明と微積分を脚注や演習問題に回す直感的なアプローチを本書の決定的な特徴として示している。この版は、計量経済学を学び始めた学生、復習したい回帰分析の利用者、手元に置く参考書を求める実務家を対象としている。
- プロジェクトの実施を軸に構成。 定式化に丸ごと二つの章が充てられ、第11章は自分自身の回帰分析プロジェクトの実施に充てられている。学生が実証論文を書かなければならない授業に向いている。
- 学習支援。 出版社は、モデル構築上の判断にフィードバックを返す「対話型回帰学習演習」、授業中と授業後の実習のために付録に新設された「計量経済学ラボ」、前の版の約3倍に増えた付録Aの演習問題の解答、そしてすべてのデータセット、Stataの手引き、スライド、ラボの解答を収めたウェブサイトを挙げている。
- 全編でStataを使用。 本文の例と演習問題はすべてStataで推定され、付録とウェブサイトにソフトウェアの説明があるため、学生は手法とあわせて標準的なソフトウェアを学べる。
短所
- 単一方程式に焦点。 本書の中心は単一方程式の線形回帰であり、連立方程式体系、制限従属変数、時系列、パネルデータにはそれぞれ一つの章しか充てられていない。
- 現代的な因果推論の扱いは目次上わずか。 回帰不連続や差の差分析に独立した章はなく、実験とパネルデータは最終章で一緒に扱われる。
コースにおける位置づけ
このコースの文献リストの中で、スタデンムンドは最も実践志向の回帰分析の教科書であり、本文で行列代数と微積分を避けているため、本格的な教科書の中で最も取り組みやすい。ストックとワトソンの Introduction to Econometrics とウールドリッジの Introductory Econometrics は、より多くの統計理論と幅広い応用を伴って同様の範囲を扱っており、スタデンムンドを無理なく終えた学生はどちらにも進める。ニューボールドらの Statistics for Business and Economics は、第5章が前提とする確率と推測の素養を補える。
アングリストとピシュケの Mastering 'Metrics は本書の代わりではなく補完である。スタデンムンドが回帰の定式化、推定、診断の方法を教えるのに対し、Mastering 'Metrics は、どの研究デザイン(ランダム化試験、操作変数、回帰不連続、差の差分析)が因果的な結論を信頼できるものにするかを説明する。同じ著者たちの Mostly Harmless Econometrics は、応用ミクロ経済学の研究に進む学生にとって、その後に来る大学院レベルの一歩である。
本書の使い方
本書は、最初の計量経済学の授業を受ける学部生、プロジェクトのために回帰分析を行う必要のある応用分野の学生、知識を新たにしたい実務家に向いている。ピアソン社は行列代数が不要だと述べている。代数に慣れていて、統計学の入門授業を受けていれば、第5章が読みやすくなる。
- 中核となる順序: 第1〜7章と第11章は、回帰分析プロジェクトを軸にした1学期の授業の中核として成り立つ。
- 診断: 第8〜10章が自然に続き、現実のデータを使う時系列や横断面のプロジェクトには欠かせない。
- 選択科目: 第12〜16章からは授業に応じて選ぶ。第13章(ダミー従属変数)と第16章(実験データとパネルデータ)はミクロ経済学のプロジェクトに、第12章と第15章は時系列の作業に役立つ。
演習問題はStataで解き、付録Aで答えを確認するとよい。対話型回帰学習演習と計量経済学ラボは、独自のプロジェクトをまとめる準備として適している。因果的な研究を計画している学生は、第6章、第14章、第16章と並行して Mastering 'Metrics を読むとよい。
