01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Comer, D. E. (2018). The Internet Book: Everything You Need to Know about Computer Networking and How the Internet Works (5th ed.). Chapman & Hall (CRC Press, Taylor & Francis).
章の要約
第5版は34の短い章から成り、出版社によれば約400ページ、カラー図版102点を収める。出版社は4つの部分を挙げている。通信システムの概念と用語、インターネットの歴史と成長、インターネットの基本技術(ハードウェアがどう構成され、ソフトウェアがどう通信を実現するか)、そしてインターネットで利用できるアプリケーションサービスで、各サービスについて何を提供するか、どう動くかを説明する。章の題名はこの構成に沿っており、本書は経済の話題と世界規模のデジタル図書館という構想で締めくくられる。著者のカマーはパデュー大学の教授で、1970年代後半からインターネットの研究プロジェクトに参加し、インターネットアーキテクチャ委員会(IAB)の委員も務めた。本書は、技術的に正確でわかりやすい説明を求める人々に応えて書いたものだという。
第1–6章:The Internet is Everywhere(どこにでもあるインターネット);Telephones Everywhere(どこにでもある電話);The World Was Once Analog(世界はかつてアナログだった);The Past and Present Digital Network(過去と現在のデジタルネットワーク);Basic Communication(通信の基礎);Local Area Networks(ローカルエリアネットワーク)
最初の部分では通信システムの概念と語彙を導入する。インターネットがいかに広く行き渡ったかを述べる第1章の後、章題は電話システム、アナログ通信、デジタルネットワークをたどり、続いて通信の基礎とローカルエリアネットワークに進む。
第7–8章:Internet: Motivation and Beginnings(インターネット:動機と始まり);The Incredible Growth(驚異的な成長)
歴史の部分。インターネットがなぜ作られ、どれほど急速に成長したか。出版社によれば、デジタル革命の速さを記録し、インターネットの根底にある設計の意義を理解するための背景を示す。
第9–12章:Packet Switching(パケット交換);Internet: A Network of Networks(インターネット:ネットワークのネットワーク);Internet Access Using Broadband and Wireless(ブロードバンドと無線によるインターネット接続);Internet Performance(インターネットの性能)
技術の部分は中心的な考え方から始まる。データをパケットに分けること、多数のネットワークを一つに結びつけること、家庭や機器をつなぐブロードバンドと無線の技術、そしてインターネットの体感速度を決めるものである。
第13–18章:IP: Software to Create a Virtual Network(IP:仮想ネットワークを作るソフトウェア);TCP: Software for Reliable Communication(TCP:信頼性のある通信のためのソフトウェア);Clients, Servers, and Internet Services(クライアント、サーバ、インターネットサービス);Names for Computers(コンピュータの名前);Sharing an Internet Connection (NAT)(インターネット接続の共有(NAT));Why the Internet Works Well(インターネットがうまく動く理由)
インターネットを動かすソフトウェア。多数のネットワークを一つの仮想ネットワークのように振る舞わせるIP、信頼性のある配送を提供するTCP、サービスのクライアント・サーバモデル、コンピュータの名前、一つの接続を共有するためのネットワークアドレス変換、そして設計がなぜうまく機能するのかを論じる締めくくりの章である。出版社はこの部分を、続く章の土台であり、販売員が勧める製品やサービスについて的確な質問をする助けになるものと位置づけている。
第19–23章:Electronic Mail(電子メール);The World Wide Web: Browsers and Basics(ワールドワイドウェブ:ブラウザと基礎);The World Wide Web: HTML and Web Pages(ワールドワイドウェブ:HTMLとウェブページ);The World Wide Web: Web Pages that Change(ワールドワイドウェブ:変化するウェブページ);Social Networking and Personal Publishing(ソーシャルネットワーキングと個人による発信)
アプリケーションの部分は電子メールから始まり、ブラウザからHTMLページ、変化するページまでを扱うウェブの3章、続いてソーシャルネットワーキングと個人による発信に進む。
第24–29章:The Internet of Things (IOT)(モノのインターネット);Internet Search (Search Engines)(インターネット検索(検索エンジン));Voice and Video Communication (VOIP)(音声・映像通信(VoIP));File Transfer and Data Sharing(ファイル転送とデータ共有);Remote Desktop(リモートデスクトップ);Cloud Services and Cloud Computing(クラウドサービスとクラウドコンピューティング)
さらに多くのサービス。つながった機器、検索エンジン、音声通話とビデオ通話、ファイルの転送と共有、リモートデスクトップによるアクセス、クラウドコンピューティングである。
第30–32章:Network Security (Encryption and Firewalls)(ネットワークセキュリティ(暗号化とファイアウォール));Security Scams: Fooling Users(セキュリティ詐欺:利用者をだます手口);Secure Access from a Distance (VPNs)(遠隔からの安全なアクセス(VPN))
一般の利用者のためのセキュリティ。暗号化とファイアウォール、利用者をだます詐欺、仮想プライベートネットワークを扱う。出版社は、詐欺や誇大な宣伝文句を避けるための助言を特に挙げている。
第33–34章:Internet Economics and Electronic Commerce(インターネット経済と電子商取引);A Global Digital Library(世界規模のデジタル図書館)
最後に、インターネットの経済とオンラインの商取引、そして世界規模の情報の図書館としてのインターネットを取り上げる。
主要概念
第1–8章:通信と歴史
- アナログ通信とデジタル通信:情報を表現し送る2つの方式。電話網の歴史を通じてたどられる。
- ローカルエリアネットワーク:限られた範囲内のコンピュータを結ぶネットワーク。
- インターネットの成長:研究プロジェクトから世界規模のシステムへの急速な拡大。
第9–18章:インターネットの仕組み
- パケット交換:データをパケットに分けてネットワークを共有する方式で、インターネットの設計の根底にある考え方。
- ネットワークのネットワーク:多数の独立したネットワークを結合したものとしてのインターネット。
- IP:相互接続されたネットワークを単一の仮想ネットワークとして振る舞わせるソフトウェア。
- TCP:信頼性のないパケット配送を信頼性のある通信に変えるソフトウェア。
- クライアント・サーバモデル:サーバプログラムがクライアントプログラムにサービスを提供する形。
- ドメイン名とNAT:コンピュータの名前と、一つのインターネット接続を多数の機器で共有する仕組み。
第19–34章:サービスと社会
- ワールドワイドウェブ:ブラウザ、HTMLページ、変化するページ。
- モノのインターネットとクラウドコンピューティング:つながった機器と、遠隔のデータセンターから提供されるサービス。
- 暗号化、ファイアウォール、VPN:利用者とその通信を守る基本的な手段。
- 詐欺:機械ではなく利用者を狙うだましの手口。
批判的分析
長所
- インターネットの草分けが専門外の読者のために書いた本。 出版社は、本書が強い技術的背景を持たない読者のためのもので、序盤の章が必要な用語を説明すると述べている。インターネット構築に自ら関わったカマーの経歴が説明に信頼性を与えている。出版社が引用するセント・アンセルム大学のアダム・R・アルビナは、日常の例えや類比を使って、技術の素養がない読者にも主題をわかりやすくした、網羅的だが技術的ではない入門書だと評している。
- 仕組みとサービスを合わせて説明する。 本書は各サービスについて何を提供し、どう動くかの両方を説明するので、読者はTCPやIPを学んだ後、それが電子メール、ウェブ、ビデオ通話の中で働く様子を見ることができる。
- 説明としての歴史。 インターネットの動機と成長についての2章に加え、電話とアナログ通信の章が、設計を所与のものとして示すのではなく、なぜそのような形になったのかを説明する。
- 短く完結した章。 約400ページに34章があり、1章あたり平均十数ページである。それぞれ一つのサービスを扱うアプリケーションの章は、選んで読むのに向いている。
短所
- 技術書ではなく概念の本。 本書はプロトコルの形式、アルゴリズム、性能分析を教えることを目的としておらず、ネットワークの授業ではそのために本格的な教科書が必要になる。
- ところどころ古くなっている。 2018年刊行のこの版は、その後のサービス、セキュリティ上の脅威、接続技術の変化を反映できない。歴史の章は古びにくいが、個々のサービスの章はこの点を念頭に置いて読むべきである。
- 深さより幅広いサービス。 34章のうち16章がアプリケーションとその社会的背景に充てられる一方、目次には、技術的な授業の中心的な話題の一つであるルーティングを独立に扱う章がない。
コースにおける位置づけ
本書はネットワークのコースへの最もやさしい入口であり、ネットワークを学んだことのない読者のためのインターネット全体の概念地図である。フォルーザンの Data Communications and Networking with TCP/IP Protocol Suite は本格的な入門教科書で、物理層から上へと層ごとに、はるかに多くの技術的詳細を伴って進む。先に、あるいは並行してカマーを読むと、学生は各層を全体像の中に位置づけやすくなる。カロスとロスの Computer Networking: A Top-Down Approach と、タネンバウム、フィームスター、ウェザロールの Computer Networks は、ある程度のプログラミングの素養を前提とする学部の標準的な教科書である。
実際のパケットトレースでプロトコルを説明するフォールとスティーブンスの TCP/IP Illustrated, Volume 1 や、高速なネットワーク実装に関する大学院の教科書であるヴァルギーズとシューの Network Algorithmics は、本書をはるかに超える。技術的な授業ではカマーはこれらの代わりにはならないが、それらの前に読む最初の1冊として、また他分野からネットワークの科目を一つだけ取る学生の参考書として役に立つ。
本書の使い方
本書は、最初のネットワークの授業の前の計算機科学の初学者、工学的な詳細抜きでインターネットを理解する必要のある情報システム、経営、その他の分野の学生、そして一般の読者に向いている。前提となるのは、コンピュータとウェブを日常的に使っていることだけである。
- 技術的な授業のために: まず第9–18章を丁寧に読む。パケット交換、IP、TCP、名前、NATという、本格的な教科書がその後に展開する考え方を扱っている。通信の基礎とLANについては第5–6章を加える。
- 一般向け、または専門外の授業のために: 順番に読む。第2–8章の歴史を知っておくと、後の設計の意義を理解しやすくなる。
- サービスの章から選ぶ: 第19–34章は関心に応じて選んで読める。セキュリティを扱う第30–32章は誰にとっても読む価値がある。
各章をすでに使っている道具と結びつけて能動的に読むとよい。アドレスとNATについて読みながら自分のネットワーク設定を確かめたり、ウェブの章を読みながらウェブページが読み込まれる様子を観察したりする。この後に技術的な授業に進む学生は、読みながら疑問を書き留め、フォルーザンやカロスとロスのプロトコルの章でその答えを探すとよい。
