01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Harris, D. C. (2012). Exploring Chemical Analysis (5th ed.). W. H. Freeman.
章の要約
第5版は約640ページ、第0章から第23章までの全24章からなる。各章は短い実例の話題(河川水中のコカイン残留物、火星探査機フェニックスでの滴定、オゾンホールなど)で始まり、番号付きの節の間にコラム、教室での演示実験、いくつかの章では標準的な実験手順が挟まれている。出版社は本書を、主な関心が化学以外の分野にあることの多い学生向けの1学期用入門書と説明している。巻末には用語集、データの付録4つ(溶解度積、酸解離定数、標準還元電位、酸化数と酸化還元式の釣り合わせ方)、「Ask Yourself」問題の解答、問題の答えがある。
第0章:分析のプロセス
分析化学者の仕事と分析の一般的な手順を短く概観し、代表試料の作り方についてのコラムを置く。
第1–2章:化学的な測定、実験の道具
第1章はSI単位、単位換算、濃度の単位、溶液の調製、そして平衡定数の最初の紹介を扱う。第2章は実験室での作業の手引きで、安全、廃棄物処理とグリーンケミストリー、実験ノート、化学天秤、ビュレット、メスフラスコ、ピペットとシリンジ、ろ過、乾燥、体積計の校正、試料調製の方法を扱い、50 mLビュレットの校正の標準手順を載せる。
第3–5章:数学の道具箱、統計、品質保証と校正法
データ処理の中核部分。第3章は有効数字、誤差の種類、不確かさの伝播、表計算ソフトの入門とExcelによるグラフ作成を扱う。第4章はガウス分布、F検定、スチューデントのtと表計算によるt検定、外れ値のためのグラブス検定、最小二乗法による当てはめと検量線を扱い、コラムでは疫学の例を使って帰無仮説の選び方を説明する。第5章は品質保証(管理図を含む)、分析法のバリデーション、標準添加法、内標準法を導入する。
第6–7章:滴定入門、重量分析と燃焼分析
第6章は容量分析の原理と計算を述べ、水槽の化学についての節(出版社は海水水槽での授業データに言及している)を含み、続いて溶解度積、混合物の滴定、銀イオンを用いる滴定を扱う。第7章は沈殿、重量分析の計算、燃焼分析を扱う。
第8–11章:酸と塩基の導入、緩衝液、酸塩基滴定、多塩基酸と多酸塩基
本書で最も長い一続きの部分である。第8章は[H⁺]、[OH⁻]、pHの関係を示し、弱酸と弱塩基の平衡を展開する。第9章はヘンダーソン–ハッセルバルヒの式、緩衝液の調製と緩衝能、指示薬の働きを導入する。第10章は強酸・弱酸・強塩基・弱塩基の滴定曲線を組み立て、終点の求め方を論じ、ケルダール窒素分析を説明し、表計算で滴定をモデル化する方法を示す。第11章はアミノ酸を例に二塩基系へと拡張し、あるpHでどの化学種が優勢かを問う。
第12–13章:化学平衡をさらに詳しく、EDTA滴定
第12章はイオン強度、活量係数、電荷収支と物質収支、平衡の系統的な取り扱い、分率組成式を加える。第13章は金属キレート錯体、EDTA、金属指示薬、滴定の技法、金属–EDTA平衡のpH依存性、滴定曲線を扱う。
第14–17章:電極電位、電極による測定、酸化還元滴定、電気化学の機器分析法
第14章は酸化還元化学とガルバニ電池から、標準電位、ネルンストの式、E°と平衡定数の関係、参照電極へと進む。第15章は指示電極、液間電位、イオン選択性電極、ガラス電極によるpH測定を扱う。第16章は酸化還元滴定の理論、酸化還元指示薬、ヨウ素を用いる滴定を扱う。第17章は電解重量分析と電量分析、アンペロメトリー、ボルタンメトリー、ポーラログラフィーを導入する。
第18–20章:光あれ、分光光度法:装置と応用、原子分光法
第18章は光の性質、吸収とベールの法則、測定上の実際的な事項を導入する。第19章は分光光度計、混合物の分析、分光光度滴定、分子が光を吸収するときに起こること、分析におけるルミネセンスを説明する。第20章は炎・ファーネス・プラズマによる原子化、温度の影響、装置、干渉、誘導結合プラズマ質量分析を扱う。
第21–23章:クロマトグラフィーと質量分析の原理、ガスクロマトグラフィーと液体クロマトグラフィー、各種クロマトグラフィーとキャピラリー電気泳動
第21章はクロマトグラフィーとは何か、クロマトグラムをどう記述するか、なぜバンドが広がるのかを説明し、続いて質量分析と質量スペクトルから得られる情報を導入する。第22章はガスクロマトグラフィー、古典的な液体クロマトグラフィーと高速液体クロマトグラフィー、試料調製を扱う。第23章はイオン交換、イオン、分子ふるい(サイズ排除)、アフィニティーの各クロマトグラフィーを加え、さらにキャピラリー電気泳動を扱い、チップ上でのDNA鑑定で締めくくる。
主要概念
第0–5章:測定とデータ
- 代表試料:分析対象の物質全体の組成を反映する試料。
- 不確かさの伝播:測定量の不確かさが計算結果の中でどう合成されるか。
- F検定、t検定、グラブス検定:精度の比較、平均値の比較、外れ値を棄却するかどうかの判断のための統計的検定。
- 標準添加法と内標準法:マトリックス効果や装置応答の変動を補正する校正法。
第6–13章:平衡と滴定
- 溶解度積:難溶性塩の溶解を支配する平衡定数。
- ヘンダーソン–ハッセルバルヒの式:緩衝液のpH、pKa、塩基と酸の比の関係。
- 平衡の系統的な取り扱い:すべての平衡式を電荷収支・物質収支とともに書き出して系を解く方法。
- EDTA滴定:結合がpHに依存するキレート剤による金属イオンの滴定。
第14–17章:電気化学
- ネルンストの式:電池の電位が反応物と生成物の濃度(活量)にどう依存するか。
- イオン選択性電極:電位が特定のイオンに選択的に応答する電極で、最もなじみ深いのはガラスpH電極である。
第18–23章:分光法と分離
- ベールの法則:吸光度は濃度と光路長に比例する。
- バンドの広がり:カラムを移動する間にクロマトグラフィーのピークが広がる現象で、分離度を制限する。
- キャピラリー電気泳動:細いキャピラリー内の電場の中での移動によってイオンを分離する方法。
批判的分析
長所
- 問題解決の支援が組み込まれている。 出版社によれば、各例題の最後には問題をより簡単な段階に分けた「Test Yourself」問題があり、目次からは巻末に「Ask Yourself」問題の解答と問題の答えがあることがわかる。別売の解答集もある。
- 全体を通じた具体的な文脈。 章冒頭の話題とコラムが、分析法を生物学、環境科学、医学、惑星科学に結びつける。出版社は第5版で加わった応用例として、火星での過塩素酸塩の検出、食品容器中のビスフェノールA、チップ上でのDNA鑑定などを挙げている。
- 表計算を使うが依存しない。 表計算は早い段階(第3章)で導入され、t検定、最小二乗法、滴定曲線で繰り返し使われるが、出版社は表計算ソフトを一度も開かずに本書を使えると述べている。表計算向けの問題にはアイコンが付いている。
- 教室での演示実験と実験の実践。 平衡と電気化学の各章には演示実験が配され、標準手順を含む第2章は実験室への実践的な入門になっている。
短所
- 平衡と滴定に比重が偏っている。 24章のうち12章(第6–17章)が平衡、滴定、電気化学を扱い、分光法と分離は合わせて6章である。機器分析を深く学ぶ必要のある学生には別の教科書が必要になる。
- ソフトウェアと事例が古い。 第5版は2012年のもので、表計算の説明はExcel 2007に合わせて更新されたものなので、メニューやコマンドは現行版と異なる。
- 分子構造決定のための分光法がない。 赤外分光法とNMRは目次に現れず、質量分析はクロマトグラフィーの章の中で導入される。
コースにおける位置づけ
本書はこのコースで最も取り組みやすい定量分析の入門書である。HarrisとLucyの Quantitative Chemical Analysis は同じ著者による本で、似た範囲をより詳しく扱う。出版社が Exploring Chemical Analysis を主に化学以外の分野の学生向けの1学期用の授業と位置づけていることから、非専攻の学生には本書が適しており、化学専攻の学生は直接 Quantitative Chemical Analysis に進むか、両者を併用するとよい。David Harveyの Analytical Chemistry 2.1 は最初の分析化学の授業向けのオープンテキストで、同じ領域(平衡、統計、分光法、クロマトグラフィー、電気化学)を扱っており、追加の説明や問題を無料で得られる有用な資料である。
機器分析については、RouessacとRouessacの Chemical Analysis が理論を抑えて20以上の機器分析法を概観し、Harrisの6つの機器分析の章が残す空白を埋める。Skoog、Holler、Crouchの Principles of Instrumental Analysis は装置の原理と設計を扱う上級の教科書である。Bard、Faulkner、Whiteの Electrochemical Methods は、電気化学を専門にする学生が第14–17章の後に進む大学院レベルの教科書である。
本書の使い方
本書は1学期の分析化学の授業、とくに生物学、地質学、環境科学など化学以外の分野の学生に向いている。前提となるのは化学量論と平衡の初歩を含む一般化学で、平衡については第1章で改めて扱われる。
1学期の実践的な計画:
- 中核: 第0–5章(測定、実験の道具、誤差、統計、品質保証)、続いて第6章と第8–10章(滴定、酸と塩基、緩衝液、酸塩基滴定)。これらはどの分析実験にも必要な土台となる。
- 電気化学と分光法: 電位、電極、ベールの法則、分光光度法のために第14–15章と第18–19章。
- 分離: クロマトグラフィーの原理と主な手法のために第21–22章。
- 時間と関心に応じて: 第7章(重量分析と燃焼分析)、第11–13章(多塩基系、活量と平衡の系統的な取り扱い、EDTA)、第16–17章(酸化還元滴定と電気化学の機器分析)、第20章(原子分光法)、第23章(その他のクロマトグラフィーとキャピラリー電気泳動)。
各例題の「Test Yourself」問題を解いてから先に進み、次に「Ask Yourself」問題に取り組み、どちらも巻末の解答で確かめるとよい。最初の実験の前に第2章を読み、そこで説明されている実験ノートの付け方を守るとよい。表計算の問題は、新しいバージョンのExcelでも取り組む価値がある。最小二乗法や滴定曲線といった技法はそのまま応用できるからである。
