01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Davies, J. A. (2015). Life Unfolding: How the Human Body Creates Itself. Oxford University Press. (Original work published 2014.)
章の要約
本書は2014年2月にハードカバーで、2015年にペーパーバックで刊行された。約300ページで、冒頭の章と4部に分かれた18の章からなり、参考文献と索引が付いている。著者はエディンバラ大学の発生生物学者である。出版社によれば、本書は、卵から成人に至るヒトの発生の物語を、「適応的自己組織化」というただ一つの中心原理によって語る。多数の細胞どうしの相互作用、そして細胞内で働く分子機械どうしの相互作用によって、自分たちよりはるかに大きな組織が組み立てられ、その過程で誤りが修正され、新たな複雑さの層が加わっていくという考え方である。デイヴィスは本書を、これを明快かつ平易に説明しようとする試みだと述べ、システム的なアプローチ、すなわち、ごくわずかな情報しかもたない小さな単位が、フィードバックによってはるかに大きなスケールの構造を築けることに重点を置いている。章題の多くは暗示的なので、以下の概要は、章題、部の見出し、出版社の紹介から読み取れる範囲にとどめる。
第1章:異質なテクノロジーと向き合う
冒頭の章は4つの部の外に置かれている。その章題は、体が自らを築くやり方を、人間の工学とは根本的に異なるものとして示している。Publishers Weekly の書評はこのテーマを、体は私たちが家を建てるのとはまったく違うやり方で自らを築き、そこには指揮をとるボスがおらず、制御はあらゆる場所にある、とまとめている。
第I部 最初の素描――第2〜6章:一つの細胞から多数の細胞へ/違いをつくる/体の設計図を敷く/脳を始める/長い分裂
第I部は最も初期の段階を扱う。受精卵から多数の細胞への移行、それらの細胞を互いに異ならせること、基本的な体の設計図の確立、そして脳の形成の始まりである。この部を締めくくる「長い分裂」の主題は資料からは明らかでなく、本書そのもので確かめるのがよい。
第II部 細部を加える――第7〜13章:運命を決める対話/内なる旅/配管/器官を組織する/腕(と脚)をとる/Yとその仕組み/配線
第II部は素描を肉付けする。章題が示すのは、細胞間のシグナル伝達、胚の内部での細胞の移動、体の血管や管、器官の形成、腕と脚の成長、Y染色体の役割、そして神経系の配線である。Publishers Weekly の書評は、そこで働く戦略を、分泌されるタンパク質どうしの相互作用、異なる受容体と接着性をもつ細胞表面、そして最終的には脳のさまざまな部分からの分子的なメッセージとして描いている。
第III部 洗練――第14〜18章:人間になるために死ぬ/心を決める/釣り合いの感覚/友をつくり、敵に立ち向かう/保守モード
第III部は、基本的な構築のあとで体を洗練させる過程を扱う。章題からうかがえるのは、正常な発生の一部としての細胞死、心の形成(書評者は、活動に依存したニューロンの配線と再配線に言及している)、体の釣り合いの制御、免疫系による味方と敵の区別、そして成人期の体の維持である。出版社は、本書が、体がなぜ老い、衰えるのかを理解するために発生学の知識がどう使われているかを取り上げていると述べている。
第IV部 展望――第19章:展望
最後の部は1章だけからなる。Publishers Weekly の書評によれば、デイヴィスはここで、今後の鍵は遺伝子発現と細胞間の結合のより大きなパターン、すなわち普遍的な原理を明らかにしうるネットワークの研究にあると論じている。
主要概念
第1章と第I部:異質なテクノロジーと向き合う/最初の素描
- 自己組織化:中央の設計図や制御者なしに、細胞間の局所的な相互作用から大きく複雑な構造が築かれること。
- 適応的自己組織化:進行しながら自らの誤りを修正する自己組織化。本書の中心原理。
- 体の設計図:発生の初期に確立される体の基本的な配置。
第II部:細部を加える
- 細胞間シグナル伝達:分泌タンパク質と表面受容体による細胞間の情報伝達。細胞が何になるかを決める。
- 細胞接着:細胞どうしのくっつき方の違い。組織の選別と成形に使われる。
- 器官形成:初期胚から器官、肢、血管、神経の結合がつくられること。
第III〜IV部:洗練/展望
- 活動依存的な配線:神経の結合が、それ自体の活動によって洗練されること。
- フィードバック:小さく単純な単位が、自分よりはるかに大きな構造を組織し調節できるようにする仕組み。
- 維持と老化:成人期に体が組織化された状態を保つための継続的な働きと、それが破綻したときに起こること。
批判的分析
長所
- ただ一つの統一的な考え方。 出版社と著者自身の説明によれば、適応的自己組織化が本書全体を貫いている。これにより専門外の読者は、発生を事実の目録としてではなく、互いに関連した過程の集まりとして理解できる。フィードバックと制御を重視するという著者の方針は、システム生物学の考え方を物語に持ち込んでいる。
- ヒトが中心。 本書はヒトの体を卵から成人まで、さらに維持と老化までたどる。自分の体や医学に関心のある読者にとって、テーマは直接に身近なものとなる。
- 胚の先まで扱う。 第III部は物語を、心の形成、体の釣り合い、免疫、維持へと進め、発生を生理学、老化、病気と結びつけている。
- 学生に役立つと評価されている。 Publishers Weekly は、発生生物学を学ぶ学生にとって有用な本だと評価した。Scientific American の紹介は、小さな構成要素がどのように生命の複雑さを生み出すかについて、何がわかっていて何がわかっていないかを示す本だと述べている。
短所
- 一般読者には密度が高い。 Publishers Weekly の書評者は、学生には勧めつつも、一般読者にとってはかなり密度が高いと感じている。学校の生物学の知識がない読者は、ある程度の難しさを覚悟したほうがよい。
- 教科書ではない。 本書は一般読者と学生に向けた、ヒトの体についての物語である。モデル生物や実験を体系的に学ぶようには構成されておらず、授業用のテキストの代わりにはならない。
- 2014年時点のスナップショット。 研究の状況は2010年代初めのものである。オルガノイドや単一細胞解析など、その後の進展は対象外である。
コースにおける位置づけ
このリストの発生生物学の本のなかで、Life Unfolding は一般読者向けの2冊のうち長いほうである。Lewis Wolpert の Developmental Biology: A Very Short Introduction は、脊椎動物、無脊椎動物、植物にわたる発生の基本過程を約130ページで扱う。より手早く読める最初の一冊であり、ヒトに焦点を絞る Davies がめざしていない比較の背景を与えてくれる。先に Wolpert、次に Davies という順序がうまく機能する。Wolpert が用語を与え、Davies がシステム的な視点とヒトの物語を加える。
授業向けには、Slack と Dale の Essential Developmental Biology と Barresi と Gilbert の Developmental Biology が、モデル生物、実験、メカニズムを体系的に扱う教科書である。Wolpert's Principles of Development は、細胞生物学と分子生物学の素養のある読者向けの上級教科書である。Carroll、Grenier、Weatherbee の From DNA to Diversity は、Davies が間接的にしか触れない動物の形の進化を扱う。Davies の本は、これらの教科書のいずれかと並行して、メカニズムを結びつける物語として読むのが最もよい。
本書の使い方
本書は一般読者と学生に向けて書かれている。前提とされているのは学校の生物学だが、書評者が指摘した密度を考えると、細胞と遺伝子についてある程度なじんでいると読みやすい。
- 順に読む: 本書は卵から成人までの物語であり、4つの部は互いに積み重なっている。第1章は中心となる考え方を示すので、飛ばさないこと。
- 学生にとっての中心: 初期胚と器官・組織の構築を扱う第I部と第II部。多くの発生生物学の授業の内容にあたる。
- より広い関心のために: 神経系、免疫、体の釣り合い、維持を扱う第III部は、神経科学、免疫学、医学の学生に向いている。最終章は、研究の方向を考えるすべての人に役立つ。
- 授業と並行して: 教科書の各単元のあとで、対応する Davies の章を読み、学んだばかりのメカニズムをフィードバックと自己組織化がどう説明するかを考える。
