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Karp's Cell and Molecular Biology(カープ細胞・分子生物学) cover

生物学

生物学

Karp's Cell and Molecular Biology(カープ細胞・分子生物学)

Gerald Karp; Janet Iwasa; Wallace Marshall

英語原題: Karp's Cell and Molecular Biology

各テーマを、その知見を確立した実験を軸に組み立てる細胞・分子生物学の教科書。生命の化学的基盤から、膜、エネルギー変換、細胞骨格を経て、遺伝子発現、シグナル伝達、細胞周期、がんへと進む。本文に加えて、ヒトの疾患、歴史的な実験、植物細胞生物学、バイオエンジニアリングを扱うコラムを備える。

前提知識: 入門生物学と一般化学。有機化学と生化学の知識があると役立つ。

難易度レベル
中級
学術レベル
学部
cell biologymolecular biologymembranesgene expressionexperimental methods教科書

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Karp, G., Iwasa, J., & Marshall, W. (2020). Karp's Cell and Molecular Biology (9th ed.). Wiley.

章の要約

第9版は全18章、約944ページである。本文のほかに、目次には3種類の定型的な記事が並ぶ。「Human Perspective」は話題を疾患と結びつけ、「Experimental Pathways」はある知見がどのように確立されたかをたどる。今版で新たに加わった「Green Cells」(植物細胞生物学)と「Engineering Linkage」(生体工学)の節は、第1章から第17章までのそれぞれに置かれている。出版社は、この2つの新しい節を、それぞれに独自の評価問題を伴う、この版の主な追加点として紹介している。

第1–2章:細胞・分子生物学研究への導入/生命の化学的基盤

第1章は、細胞の発見と細胞の基本的性質から、2つの根本的に異なる細胞の種類(原核細胞と真核細胞)へ進み、続いてウイルスとウイロイドを扱う。第2章は、共有結合と非共有結合、酸・塩基・緩衝液、そして4種類の生体分子(糖質、脂質、タンパク質、核酸)を扱う。4種類の生体分子の節は53ページから95ページまでと章の大半を占め、タンパク質の構造とフォールディングを取り上げたのち、章は複雑な高分子構造の形成で終わる。

第3章:生体エネルギー論、酵素、代謝

最初に熱力学と生体エネルギー論、次に生物学的触媒としての酵素(触媒作用の機構を含む)、最後に代謝の概観とその調節を扱う。

第4章:形質膜の構造と機能

膜の化学組成、膜タンパク質と膜脂質、流動性と膜の動的性質、膜を越える物質の移動、そして膜電位と神経インパルスを扱う。

第5–6章:好気呼吸とミトコンドリア/光合成と葉緑体

2つのエネルギー変換の章は構成が対応している。第5章はミトコンドリアの構造、好気代謝、プロトン駆動力、ATP合成の装置を扱い、ペルオキシソームの節もある。第6章は光合成の起源、葉緑体の構造、光の吸収、反応中心、光リン酸化、二酸化炭素の固定を扱う。

第7章:細胞と環境との相互作用

細胞外物質、細胞間接着、密着結合、細胞間コミュニケーション、細胞壁を扱い、細胞を組織の一部として捉える。

第8章:細胞質の膜系:構造、機能、膜輸送

内膜系の概観とその研究方法に続いて、小胞体、ゴルジ体、小胞輸送、リソソーム、エンドサイトーシス経路を扱う。章末は、ペルオキシソーム、ミトコンドリア、葉緑体による翻訳後のタンパク質取り込みである。

第9章:細胞骨格と細胞運動

微小管、モータータンパク質、微小管形成中心、繊毛と鞭毛、中間径フィラメント、アクチンとミオシン、筋収縮、アクチン結合タンパク質、細胞運動、細菌の細胞骨格を扱う。

第10–11章:遺伝子とゲノムの本質/セントラルドグマ:DNAからRNA、タンパク質へ

分子遺伝学はここから始まる。第10章は、染色体が遺伝情報の担い手であるという理解から遺伝子の化学的本質へと遺伝子概念をたどり、続いてゲノムの複雑さ、安定性、塩基配列決定を扱う。第11章は、原核細胞と真核細胞の転写、リボソームRNA・転移RNA・メッセンジャーRNAのプロセシング、低分子調節RNA、CRISPRとその他の非コードRNA、遺伝暗号と翻訳を扱う。

第12–13章:遺伝子発現の制御/DNAの複製と修復

第12章は、細菌における制御、核膜、染色体とクロマチン、組織化された核、そして転写・RNAプロセシング・翻訳・翻訳後の各段階の制御を扱う。第13章は、細菌、ウイルス、真核細胞における複製、DNAポリメラーゼ、DNA修復を扱う。

第14–15章:細胞分裂/細胞シグナル伝達

第14章は細胞周期、有糸分裂と細胞質分裂、減数分裂を扱う。第15章は、シグナル伝達系の基本要素、Gタンパク質共役型受容体と二次メッセンジャー、タンパク質のチロシンリン酸化、細胞内メッセンジャーとしてのカルシウムと一酸化窒素、経路間のクロストーク、アポトーシスを扱う。

第16–17章:がん/免疫応答

第16章は、がん細胞の基本的性質と原因、遺伝子の病気としてのがん、がんに対抗する戦略を扱う。第17章は、クローン選択説、Bリンパ球とTリンパ球、免疫の細胞・分子基盤に関する選択された話題、リンパ球活性化におけるシグナル伝達経路を扱う。

第18章:細胞・分子生物学の技術

巻末の方法論の章である。光学顕微鏡、電子顕微鏡、原子間力顕微鏡、放射性同位体、細胞培養、遠心分離、タンパク質と核酸の分画、ハイブリダイゼーション、組換えDNA、PCR、DNA塩基配列決定、ライブラリー、遺伝子導入、遺伝子編集とサイレンシング、抗体の利用を扱う。

主要概念

第1–9章:細胞、エネルギー、膜、細胞骨格

  • 原核細胞と真核細胞:第1章で比較される、根本的に異なる2種類の細胞。
  • プロトン駆動力:第5章で、ATP合成の装置がどう働くかを説明するために用いられる勾配。
  • 内膜系:第8章が1つのつながった系として扱う膜コンパートメントと小胞輸送。
  • モータータンパク質:第9章のキネシンとダイニン、および筋収縮のミオシン。

第10–15章:遺伝子、遺伝子発現、シグナル伝達

  • セントラルドグマ:DNAからRNA、タンパク質への流れで、第11章の中心となる考え方。
  • クロマチン:染色体の構造と、第12章で扱う遺伝子発現制御におけるその役割。
  • シグナル伝達:第15章の受容体、二次メッセンジャー、タンパク質のリン酸化。
  • アポトーシス:プログラムされた細胞死で、第15章の最後に置かれている。

第16–18章:がん、免疫、方法

  • 遺伝子の病気としてのがん:第16.3節。その前にがんの原因を扱う節がある。
  • クローン選択説:第17.3節がBリンパ球に適用する理論。
  • 組換えDNA技術とPCR:第18章の中核となる分子生物学的手法。

批判的分析

長所

  • 明示された実験重視の姿勢。 出版社は、本書を、重要な概念と実験を結びつけ、学生が「どうやってそれを知ったのか」を理解できるようにする本として説明している。これは目次からも見て取れる。「Experimental Pathways」が13件並び、真核細胞の起源、遺伝子の化学的本質、触媒としてのRNAの役割、MPFの発見と性質の解明、がん遺伝子の発見などが含まれる。
  • 中程度の分量と、取捨選択しやすい付加記事。 出版社は、本書を中程度の長さで親しみやすい文体の本と位置づけ、特集の節を、特定の下位分野を重視したい教員のための選択式の要素と説明している。読者は本文を軸に読み進め、囲み記事は任意として扱える。
  • 標準的な授業の範囲を広く覆う。 1冊で、細胞の化学、生体エネルギー論、膜、輸送、細胞骨格、遺伝子発現、シグナル伝達、がん、免疫を扱い、巻末に独立した技術の章がある。

短所

  • 新しい内容の多くは、設計上、任意である。 「Green Cells」と「Engineering Linkage」の節は今版で新設され、第1章から第17章に置かれ、記載されたページ範囲から見て、通常1〜2ページ程度である。植物生物学や生体工学を扱わない授業では読み飛ばされるため、必読とは数えない方がよい。
  • 技術が巻末にまとめられている。 第18章は方法(顕微鏡から遺伝子編集、抗体まで)を1か所にまとめており、それらを必要とする話題より後に置かれている。前の章で見慣れない方法に出会った読者は、第18章を先に参照する必要があるかもしれない。
  • 範囲が広いので取捨選択が必要。 化学、エネルギー変換、膜、細胞骨格、遺伝子発現、シグナル伝達、がん、免疫にまたがる18章は、1つの授業で使い切れる量を超えるため、教員も読者も、どの章を中核として扱うかを選ぶ必要がある。

コースにおける位置づけ

Karp は、標準的な2年次の細胞生物学の授業の主教科書である。このコースの他の本のうち、Becker's World of the Cell が最も近い代替で、どちらも1冊で完結する学部向け教科書である。Karp は各話題で実験の歴史に多くの紙幅を割き、遺伝子発現、細胞分裂、がん、免疫応答を別々の章で扱う。Becker は全26章で、解糖と発酵、好気呼吸、光合成にそれぞれ独立した章があり、ニューロンのシグナル伝達の章もあるが、目次に免疫の章はない。

Essential Cell Biology は入門の授業向けに書かれており、初学者にはより穏やかな出発点になる。Molecular Biology of the Cell は Karp を超えて詳細を調べるときに参照する、より包括的な本であり、Pollard の Cell Biology は、分子構造と物理的機構を説明の中心に置く研究者が書いた本で、この分野の物理的な側面を求める読者に向く。The Cell: A Very Short Introduction は専門的でない概説で、先に読んでおくことができる。

本書の使い方

本書は、生物学、生化学、生物医科学の課程で、入門生物学と一般化学を修めたうえで細胞生物学の基幹科目を履修する2年次の学生に向いている。また、まもなく原著論文に触れる学生にも役立つ。「Experimental Pathways」が結論に至る経緯を示しているからである。

実践的な進め方は次のとおり。化学に慣れていれば第1–3章は手早く読み、そのあと第4–9章(膜、ミトコンドリア、葉緑体、細胞外環境、輸送、細胞骨格)を構造面の中核として順に読む。第10–13章は遺伝子と遺伝子発現についてのまとまった1ブロックで、遺伝学や分子生物学の授業と組み合わせやすい。第14–17章(細胞分裂、シグナル伝達、がん、免疫)は、シラバスに合わせて順序を入れ替えてよい。第18章は、前の章で方法が出てくるたびに参照する資料として使う。

付加記事の選び方としては、実験を重視する授業には「Experimental Pathways」が最も役に立ち、「Human Perspective」は医療系志望の読者に向き、「Green Cells」と「Engineering Linkage」は授業が植物生物学や生体工学を扱うときに読む価値がある。出版社によれば、各章の「Green Cells」と「Engineering Linkage」の節にはそれぞれ独自の評価問題が付いているので、授業でオンライン教材を使う場合は確認するとよい。