01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Madigan, M. T., Bender, K. S., Buckley, D. H., Sattley, W. M., & Stahl, D. A. (2020). Brock Biology of Microorganisms (16th ed.). Pearson.
章の要約
本書は7単元34章、約1,120ページからなる。Pearsonは、米国微生物学会の学部教育会議が定めた6つのテーマ、すなわち進化、細胞の構造と機能、代謝経路、情報の流れと遺伝学、微生物システム、微生物の影響を軸に組み立てられていると説明している。第16版は各章のテーマを最近の発見に据えており、出版社はゲノミクスと「オーム」革命、拡充された図版も強調している。以下の単元と章の題名は出版社のものである。
第1単元:微生物学の基礎(第1〜5章)
各章は、微生物の世界、微生物の細胞構造と機能、微生物の代謝、微生物の増殖とその制御、ウイルスとその増殖である。細胞とその代謝、微生物がどう増え、どう制御されるか、ウイルスの基本的な生物学を述べる。
第2単元:分子生物学と遺伝学(第6〜9章)
微生物における情報の流れとタンパク質のプロセシング、微生物の調節系、微生物の増殖の分子的側面、細菌とアーキアの遺伝学。遺伝情報がどう発現し調節されるか、増殖とどう結びつくか、どう交換されるかを扱う。
第3単元:ゲノミクス、合成生物学、進化(第10〜13章)
微生物ゲノミクスとその他のオーム、ウイルスのゲノミクスと多様性、バイオテクノロジーと合成生物学、微生物の進化とゲノムの動態。前の分子的な単元を、ゲノム全体、応用バイオテクノロジー、進化へと広げる。
第4単元:微生物の多様性(第14〜18章)
微生物の代謝的多様性、細菌の生態的多様性、細菌の系統的多様性、アーキアの系統的多様性、微生物真核生物の多様性。微生物の生命の幅を、まず生物のはたらきから、次に系統から概観する。
第5単元:微生物生態学と環境微生物学(第19〜23章)
微生物システムの測定、微生物の生態系、栄養循環、人工環境の微生物学、微生物と微生物・植物・動物との共生。人工的な環境も含め、環境の中の微生物を扱う。
第6単元:微生物とヒトの相互作用と免疫系(第24〜28章)
微生物とヒトの共生、微生物の感染と病原性、自然免疫:広く特異的な宿主防御、獲得免疫:高度に特異的な宿主防御、免疫の異常と抗微生物療法。微生物とヒトの宿主との関係を通じて、本書の医学的な側面を導入する。
第7単元:感染症(第29〜34章)
感染症の診断、疫学と公衆衛生、ヒトからヒトへ伝わる細菌性・ウイルス性疾患、媒介動物伝播および土壌伝播の細菌性・ウイルス性疾患、水系伝播および食品伝播の細菌性・ウイルス性疾患、真核病原体:真菌、原生動物、蠕虫。第31〜33章は伝播経路で、第34章は病原体の種類で整理されており、器官系別ではない。
主要概念
第1〜3単元:細胞、分子、ゲノム
- 微生物の代謝と増殖:第3・4章。
- 情報の流れと調節系:第6・7章。
- ゲノミクスとその他のオーム:第10章。合成生物学:第12章。
- 微生物の進化とゲノムの動態:第13章。
第4〜5単元:多様性と生態
- 代謝的多様性と系統的多様性:第14・16・17章が代謝、細菌、アーキアを扱う。
- 栄養循環と微生物の生態系:第20・21章。
- 共生:第23・24章。
第6〜7単元:宿主、免疫、疾患
- 病原性、自然免疫、獲得免疫:第25〜27章。
- 抗微生物療法:第28章。
- 疫学と公衆衛生:第30章。
批判的分析
長所
- 教育団体による枠組み。 米国微生物学会の6つのテーマが本書に明確な組織原理を与え、7つの単元は基礎、分子生物学、ゲノミクス、多様性、生態学、宿主と微生物の相互作用、疾患を分けている。
- 医学にとどまらない幅。 7単元のうち5単元(34章中23章)が疾患ではなく細胞、遺伝学、多様性、生態学を扱うため、臨床に関心がない学生にも余地がある。目次には人工環境、栄養循環、合成生物学といった話題も挙げられている。
- 最新の科学を入口にする。 Pearsonによれば、第16版の各章は最近の発見を軸に組み立てられ、学生をゲノミクスと「オーム」革命の中へ導く。
- 視覚面の重視。 出版社は豊富な図版を強調し、本版でそれをさらに拡充して、微生物学を視覚的な科学として示すとしている。
短所
- 分量。 34章・約1,120ページは1コースでは扱いきれず、教員も読者も単元を選ぶ必要がある。
- 疾患は最後。 感染症は免疫系の章の後の第7単元にしか現れず、伝播経路または病原体の種類で整理されており、器官系別ではない。器官系ごとに疾患を調べたい読者は、他のコースとは異なる構成に気づくだろう。
- 分子中心の中盤。 第2・3単元(第6〜13章)は分子生物学とゲノミクスに充てられており、化学と細胞生物学の基礎がない読者には、本の中盤がいちばん難しく感じられる。
コースにおける位置づけ
Brockは、このコースの書籍の中で、細胞生物学、遺伝学、多様性、生態学に最も重きを置く一般微生物学の教科書である。Tortora、Case、Bair、Weber、FunkeのMicrobiology: An Introductionは臨床志向の包括的な入門書で、疾患の章を身体系統ごとに整理し、出版社によれば生物学や化学の予備知識を前提としないため、医療系のコースにより適する。多様性、生態学、分子生物学を重視するコースにはBrockが向く。OpenStaxのMicrobiologyは、無料で公開ライセンスの1学期の入門書で、人の健康に関わる微生物に重点を置く。MoneyのMicrobiology: A Very Short Introductionは、予備知識を必要としない微生物世界の短い概観である。
さらに深く学ぶなら、White、Drummond、FuquaのThe Physiology and Biochemistry of Prokaryotesが生理学的テーマ別に原核細胞のはたらきを論じ、HenkinとPetersのSnyder and Champness Molecular Genetics of Bacteriaは細菌遺伝学の上級教科書である。どちらもBrockが第2・3単元で導入した主題を引き継ぐ。
本書の使い方
本書は、生物学入門と一般化学を修了した学生を対象とする。一般微生物学コースでの実践的な進め方は次のとおり。
- 中核: 基礎として第1単元(第1〜5章)、続いて情報の流れと細菌遺伝学の第6章と第9章。
- 重点に応じて選ぶ: ゲノミクス重視なら第3単元、多様性と生態重視なら第4・5単元、医学重視なら第6・7単元。
- 補助: 各章の最近の発見を軸にした導入を、内容が重要な理由を理解する手がかりにする。第4単元の前には第3章を見直す。代謝的多様性の章がその上に成り立っているからである。
医療・保健系のコースでは、第1単元から第24〜28章へ進み、第7単元の疾患の章に入る。環境微生物学のコースでは、第1単元から第4・5単元へ進み、オームを扱う第10章を併せて読む。
