01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Easttom, W. (2022). Computer Security Fundamentals (5th ed.). Pearson IT Certification (Pearson).
章の要約
第5版は全15章、約576ページで、巻末に用語集と2つの付録(参考資料一覧と、本書の多肢選択問題の解答)が付く。出版社は本書を初学者向けの1冊完結の入門書と位置づけ、すべての章に演習、プロジェクト、復習問題があるとしている。目次を見ると、各章は導入で始まり、まとめで終わる。構成は、基本概念とネットワークから、主要な攻撃の種類、防御、ポリシーと評価を経て、最後に調査と工学へと進む。
第1章:Introduction to Computer Security(コンピュータセキュリティ入門)
脅威をどの程度深刻に受け止めるべきか、脅威の種類、ネットワークへの攻撃の可能性の評価、基本的なセキュリティ用語、一般的な概念と手法、法的問題がネットワークセキュリティにどう関わるか、オンラインのセキュリティ情報源を示す。
第2章:Networks and the Internet(ネットワークとインターネット)
本書の残りの部分に必要なネットワークの基礎。ネットワークの基本、インターネットの仕組みと歴史、基本的なネットワークユーティリティ、その他のネットワーク機器、より高度な通信の話題、クラウドコンピューティングを扱う。
第3章:Cyber Stalking, Fraud, and Abuse(サイバーストーキング、詐欺、虐待)
個人を狙う犯罪。インターネット詐欺の仕組み、なりすまし(個人情報窃盗)、サイバーストーキング、サイバー犯罪から身を守る方法を扱う。
第4章:Denial of Service Attacks(サービス拒否攻撃)
攻撃の実例を図解してサービス拒否を説明し、よく使われるツール、DoS攻撃が突く弱点、具体的な攻撃の種類、現実の事例、防御策を概観する。
第5章:Malware(マルウェア)
ウイルス、トロイの木馬、バッファオーバーフロー攻撃、スパイウェア、その他のマルウェアを扱い、最後にウイルスとスパイウェアの検出と除去の節を置く。
第6章:Techniques Used by Hackers(ハッカーの使う手法)
基本用語から偵察段階、実際の攻撃、マルウェアの作成へと攻撃の流れをたどり、続いてペネトレーションテストとダークウェブを取り上げる。
第7章:Industrial Espionage in Cyberspace(サイバー空間における産業スパイ)
情報を資産として扱い、産業スパイとは何か、実例、それがどのように起こるか、どう防ぐかを検討し、営業秘密、産業スパイ法(Industrial Espionage Act)、スピアフィッシングにも触れる。
第8章:Encryption(暗号化)
本書の暗号の章。基礎と歴史、現代の共通鍵方式、公開鍵暗号、PGP、正当な暗号製品と詐欺的な製品の見分け方、デジタル署名、ハッシュ、MACとHMAC、ステガノグラフィ、暗号解析、インターネットで使われる暗号、そして量子コンピューティングと暗号の節を含む。
第9章:Computer Security Technology(コンピュータセキュリティ技術)
防御の道具箱。ウイルススキャナ、ファイアウォール、アンチスパイウェア、侵入検知システム、デジタル証明書、SSL/TLS、仮想プライベートネットワーク(VPN)、Wi-Fiセキュリティ。
第10章:Security Policies(セキュリティポリシー)
ポリシーとは何か、重要な標準、利用者向けポリシーとシステム管理ポリシー、セキュリティ侵害への対応、アクセス制御、開発ポリシー、標準・ガイドライン・手順の関係、災害復旧、ゼロトラスト、重要な法律。
第11章:Network Scanning and Vulnerability Scanning(ネットワークスキャンと脆弱性スキャン)
コンピュータシステムの評価と保護の方法、ネットワークのスキャン方法、関連するテストとスキャンの標準、そして専門家の助けをいつ、どう求めるか。
第12章:Cyber Terrorism and Information Warfare(サイバーテロと情報戦)
サイバーテロの事例、サイバー戦争の兵器、経済・軍事・一般の攻撃、SCADAシステム、情報戦、今後の動向、防御、そしてTorとダークウェブを含むテロリストの勧誘と通信。
第13章:Cyber Detective(サイバー探偵)
公開情報を使った調査。一般検索と企業検索、裁判記録と犯罪歴の確認、Usenet、Google、そしてMaltegoというツール。
第14章:Introduction to Forensics(フォレンジック入門)
証拠についての一般的な指針、PCとシステムログからの証拠の発見、削除されたファイルの復元、オペレーティングシステムのユーティリティ、Windowsレジストリ、モバイルフォレンジック、フォレンジックの資格、専門家証人、その他のフォレンジック。
第15章:Cybersecurity Engineering(サイバーセキュリティ工学)
サイバーセキュリティ工学を定義し、関連する標準、SecML、モデリングを紹介する短い締めくくりの章。
主要概念
第1–2章:基礎
- 脅威評価:脅威の種類を見きわめ、特定のネットワークへの攻撃がどの程度起こりそうかを判断すること。
- セキュリティの用語と手法:基本的な語彙と、システムを守るための一般的な戦略。
- ネットワークの基礎:ネットワークとインターネットの仕組み、およびそれを調べるためのユーティリティ。
第3–7章:攻撃と脅威
- 詐欺となりすまし:インターネットを通じて個人を狙う犯罪。
- サービス拒否:何かを盗むのではなく、システムを利用不能にする攻撃。
- マルウェア:ウイルス、トロイの木馬、スパイウェアなどのソフトウェアと、バッファオーバーフロー攻撃。
- 偵察とペネトレーションテスト:攻撃者が情報を集める方法と、防御側が自らのシステムを試すために許可を得て行う攻撃。
- 産業スパイ:ビジネス上の資産としての情報の窃取。スピアフィッシングによるものも含む。
第8–11章:防御とポリシー
- 共通鍵暗号と公開鍵暗号:暗号の2つの系統と、デジタル署名、ハッシュ、MAC。
- ファイアウォールと侵入検知:通信を選別し、攻撃を検知する技術。
- セキュリティポリシー:利用者、管理者、開発者のための成文化された規則で、標準と法律に裏づけられたもの。
- ゼロトラスト:本書がポリシーの章に位置づけているセキュリティモデル。
- 脆弱性スキャン:システムやネットワークの弱点を系統的に調べること。
第12–15章:より広い脅威、調査、工学
- 情報戦とSCADA:国家や産業制御システムに対する攻撃。
- 公開情報による調査:公的記録やツールから人物や企業についての情報を集めること。
- デジタルフォレンジック:コンピュータや携帯電話から証拠を見つけ、復元し、取り扱うこと。
- サイバーセキュリティ工学:工学的手法、標準、モデルをセキュリティに適用すること。
批判的分析
長所
- 最初の授業にふさわしい幅広さ。 15の章は個人を狙う詐欺からサイバー戦争、ポリシー、フォレンジック、工学までを扱い、概念、用語、技術、技能を1冊で紹介する入門書という出版社の説明に合っている。学生は分野の一隅ではなく、全体の地図を手にして読み終えることになる。
- ツールのレベルまで降りた実践志向。 基本的なネットワークユーティリティ、ペネトレーションテスト、Maltego、Windowsレジストリ、削除ファイルの復元といった節見出しから、実務家が出会うツールや痕跡を扱っていることがわかる。第11章は自分のネットワークのスキャンに充てられている。
- 技術とともにポリシー、法、人を扱う。 セキュリティポリシー、法的問題、重要な法律、営業秘密、ソーシャルエンジニアリングがそれぞれ取り上げられており、計算機科学だけでなく情報システムやIT管理の課程にも向く。
- 学習のための仕組みが組み込まれている。 全章の演習、プロジェクト、復習問題に加え、用語集と多肢選択問題の解答の付録があるため、独習にも小テスト形式の授業にも使いやすい。第5版ではクラウドコンピューティング、ゼロトラスト、暗号における量子コンピューティングといった最近の話題も取り入れられている。
短所
- 概説としての深さにとどまる。 歴史から量子コンピューティングまでの暗号が約40ページの1章に、サイバーセキュリティ工学が短い1章に収められている。アルゴリズムやプロトコルの動作を理解する必要のある学生には専門の教科書が必要になる。
- 技術的な話題の扱いが簡潔、あるいはポリシー寄り。 アクセス制御はセキュリティポリシーの章の一節として登場し、目次にはオペレーティングシステムのセキュリティやセキュアプログラミングの章がない。バッファオーバーフローはマルウェアの章の一節である。
- 構成にむらがある。 個人を狙う犯罪(第3章)が技術的な攻撃の章より前に置かれ、ダークウェブは第6章と第12章の両方で論じられる。そのため本書は積み上げ式の議論というより、話題の集まりとして読める。
コースにおける位置づけ
本書は、セキュリティと暗号のコースにおける、幅広く数学を使わない出発点である。パール、ペルツル、ギュネイスの Understanding Cryptography は第8章の自然な相棒で、主要な暗号とプロトコルが実際にどう動くかを、必要に応じて数学を展開しながら説明する。スターリングスとブラウンの Computer Security: Principles and Practice は、脅威、暗号、アクセス制御、ネットワークとソフトウェアのセキュリティをより技術的に深く扱い、オペレーティングシステムとネットワークについてある程度の知識を前提とするので、通常の次のステップとなる。
ロス・アンダーソンの Security Engineering(著者のウェブサイトから無料で入手可能)は、銀行や医療などの事例研究を交えて信頼できるシステムの構築を論じた大部の書で、第10章と第15章の後の発展的な読み物に適している。マット・ビショップの Computer Security: Art and Science はポリシーとアクセス制御の形式モデルを備えた学問分野としてセキュリティを扱い、カッツとリンデルの Introduction to Modern Cryptography は証明に基づく講義である。どちらもはるかに要求水準が高く、離散数学とオペレーティングシステムの授業を前提とする。
本書の使い方
本書は、計算機科学や情報システムの1年生、選択科目としてセキュリティを学ぶ他分野の学生、そして幅広い概観を求めるセキュリティ職志望者に向いている。基本的なコンピュータリテラシーがあれば十分で、ネットワークの背景知識は第2章が補ってくれる。
- 中核: 第1–2章、次に攻撃の章である第4–6章、続いて防御の章である第8–11章。この順序で脅威と対策の基本語彙が身につく。
- 関心に応じて: 第3章、第7章、第12章は脅威の全体像を個人、企業、国家へと広げる。第13–14章は調査とフォレンジックの入門で、その専門を考えている学生に向く。
- 最後に: 第15章は工学的アプローチへの短い案内である。
第2章のネットワークユーティリティや第11章のスキャンなど、ツールを使うプロジェクトは、使用を許可された機械とネットワークでのみ行うこと。復習問題で用語を確認し、第8章と並行してパールらのような暗号の教科書を読み、そこで名前の挙がる手法が実際にどう動くのかを確かめるとよい。
